輸出入における「ワシントン条約(CITES)」の基礎知識-動物だけじゃない?木材や化粧品も対象
ワシントン条約違反の対応「ワシントン条約」と聞くと、パンダや象牙、絶滅危惧種の動物を思い浮かべる方が多いでしょう。「うちはペットショップではないから関係ない」と思っていませんか?
実は、ワシントン条約(CITES)の規制対象は、生きた動物だけではありません。バッグやベルトに使われる皮革製品、漢方薬の原料、化粧品の成分、そして家具や楽器に使われる木材なども対象となります。
メーカーや商社が、知らずにこれらの原材料が含まれた製品を輸出入しようとすると、税関で止められ、処罰される可能性があります。今回は、意外と身近なワシントン条約の基礎と、外為法との関係について解説します。
1 ワシントン条約(CITES)の仕組み
正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。対象となる動植物は、その絶滅の恐れの程度に応じて、3つのランク(附属書)に分類されています。
①附属書I(絶滅のおそれのある種):商業目的の取引は原則禁止です(例:ジャイアントパンダ、ウミガメ、ゾウ(象牙)、特定のローズウッドなど)
②附属書II(現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれがある種):商取引は可能ですが、輸出国の政府機関が発行する「輸出許可書」が必要です(例:多くのワニ、ヘビ、サボテン、ラン、特定のマホガニーなど)
③附属書III(特定の国が保護のために協力を求めている種):指定国の原産品の場合は輸出許可書が、それ以外の国の場合は原産地証明書が必要です。
2 外為法との関係:税関での手続き
日本において、ワシントン条約の実効性を担保している国内法が「外為法(外国為替及び外国貿易法)」です。ワシントン条約に該当する貨物を輸出入する場合、条約に基づく許可書(CITES許可書)を取得するだけでなく、外為法に基づく経済産業大臣の「輸入承認」や「輸出承認」を得て、税関に提出する必要があります。
よくあるトラブルが、「相手国の輸出許可書はあるが、日本の輸入承認を取っていなかった」というケースや、「製品の一部(例:ギターの指板、バッグの留め具)に規制対象の木材や貝が使われていたのを見落としていた」というケースです。 税関の検査は非常に厳格です。成分分析や専門家による鑑定が行われることもあり、書類不備があれば貨物は引き取れません。
3 「加工品」や「個人的な持ち込み」の注意点
条約の対象は、原則として「個体」だけでなく「部分」や「派生物(加工品)」も含みます。 例えば、ワニ革の時計バンド、アロエを含むクリーム、ジャコウジカの成分を含む漢方薬などが該当します。
また、ECサイト(ネット通販)での購入も要注意です。海外のサイトで「日本へ発送可能」と書いてあっても、それはワシントン条約の手続きをクリアしていることを意味しません。個人輸入であっても規制は適用されるため、商品が税関で没収され、購入者が処罰されるリスクがあります。 (※一部、個人の携帯品に関する特例措置もありますが、条件は厳格です)
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東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。