木材・楽器・皮革製品…意外な規制対象と許可申請手続き |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

木材・楽器・皮革製品…意外な規制対象と許可申請手続き

前回はワシントン条約(CITES)の全体像について解説しました。今回は、企業の実務担当者が特に見落としがちな「具体的な規制品目」と、必要な手続きについて掘り下げていきます。

「うちは動植物を扱っていないから関係ない」と思っているメーカーや商社の方こそ、要注意です。特に、木材を使用する家具や楽器メーカー、成分に天然由来物を使用する化粧品・製薬メーカーにとって、ワシントン条約は輸出管理上の大きなハードルとなり得ます。

1 木材規制の強化:ローズウッドやブビンガ

近年、規制が強化されているのが「木材」です。

高級家具や仏壇、楽器(ギターやバイオリン)の材料として人気のある「ローズウッド(ツルサイカチ属全種)」や「ブビンガ」などが、ワシントン条約の附属書IIに掲載されています。

ここで重要なのは、丸太やチップの状態だけでなく、「完成品」も規制対象になる場合があることです。例えば、ローズウッドが使用されたエレキギターを海外の顧客に販売・輸出する場合、原則として経済産業省の輸出承認と、相手国での輸入許可が必要になります。「ほんの一部に使われているだけ」であっても、条約の「注釈(Annotation)」によって規制範囲が細かく定められており、免除規定に当てはまらない限り、厳格な手続きが求められます。

2 化粧品・漢方薬・アパレル

見た目では分からない「成分」にも注意が必要です。

漢方薬や健康食品には、ジャコウジカ(麝香)、クマ(熊胆)、アロエ、ラン科植物などが含まれていることがあり、これらは規制対象です。化粧品でも、キャビアエキス(チョウザメ)や特定のサボテン由来成分が含まれている場合、輸出入に許可が必要です。

アパレル製品では、ワニ革やヘビ革(パイソン)のバッグや靴が代表的ですが、コートのボタンや装飾にウミガメの甲羅(べっ甲)や象牙が使われていないか、細部まで確認する必要があります。「知らなかった」で済まされないのが輸出管理です。税関で成分分析が行われ、微量でも検出されれば、密輸(無許可輸出入)として摘発されます。

3 「楽器証明書」と手続きの実務

プロの音楽家が海外ツアーを行う場合や、オーケストラが海外公演を行う場合、楽器に使われている木材や象牙がネックとなり、税関で足止めを食らうリスクがあります。これを回避するために、「楽器証明書(Musical Instrument Certificate)」というパスポートのような書類を取得する制度があります。一度取得すれば3年間有効で、複数回の国境移動がスムーズになります。

また、商業目的の輸出の場合、輸出国(日本)での「輸出許可書」の発行に加え、輸入国側での「輸入許可書」が必要になるケース(附属書Iなど)もあります。手続きには数週間から数ヶ月かかることもあるため、ビジネスのリードタイムを考慮した早めの準備が不可欠です。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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