内部調査のポイントと体制構築―事実確認とリスク把握のすすめ
輸出事後調査対応輸出事後調査において、企業側がまず行うべきは『内部調査』です。税関(経済産業省)に提出する資料や説明内容の正確性を確保するには、社内での丁寧な事実確認と体制整備の構築が欠かせません。本日は、企業が行うべき内部調査の具体的な手順や、法的リスクを低減するための体制づくりの要点をご案内します。
目次
内部調査の目的とは?
内部調査の目的は、主として次の3点にあります。
- ①輸出に関する事実関係を正確に把握すること
- ②輸出管理上の規制違反の有無を明確にすること
- ③違反が疑われる場合の責任の所在と原因を特定すること
当局に対して誤った説明をしないためには、社内での情報の裏付けが極めて重要です。
調査の実施手順
実効性のある調査を行うには、以下のステップを順番に進めることになります。
①関係者の特定とヒアリングの実施
まず、対象の輸出取引に関与した部門や担当者を洗い出し、ヒアリングを行います。営業、技術、輸出管理、法務など、複数部署にわたることが一般的です。
・いつ、どのような製品を、どの国に、誰に輸出したか
・該非判定や取引審査等を誰が、どう行ったか
・技術情報を提供した場合、その相手や手段は何か
②資料・記録の収集と検証
社内に保管されている取引記録、メール、契約書、該非判定書などを収集します。記録が欠落している場合、その理由や代替的な証明手段を検討する必要があります。
・該非判定の根拠文書
・貿易管理台帳や通関書類
・社内会議録や技術資料の開示記録など
③法的評価とリスク分析
集めた事実と資料をもとに、弁護士が法的観点から評価を加えることが重要です。違反の可能性がある箇所については、事実関係を整理し、是正措置の方向性を検討します。
調査チームの編成と第三者関与
内部調査は客観性が求められるため、事業部門だけで完結させるのではなく、法務・コンプライアンス部門が中心となって実施する必要があります。重大な問題が見つかるおそれがある場合は、弁護士を含めた第三者的な立場の者をチームに加えることが望まれます。
また、調査対象となる従業員のプライバシーにも配慮しつつ、調査に対する協力を確保する工夫も不可欠です。
経営層への報告と初期対応の決定
調査の結果は、経営層に正確かつ迅速に報告し、次の行動方針(是正措置、当局への提出資料方針など)を検討します。内部調査の段階で曖昧な判断をせず、外部専門家の意見を取り入れることが、誤解や過少申告を防ぐカギとなります。
内部調査の重要性を改めてご留意ください
輸出事後調査における内部調査は、単なる社内確認ではなく、企業を守るための「防御の出発点」です。
調査の質が、その後の当局対応の成否を大きく左右します。当事務所では、内部調査の支援から記録整備・リスク評価・是正措置の構築まで包括的にご支援可能です。まずはご相談ください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
1 事案の概要 自動車部品メーカーから、海外工場で発生した設備トラブルへの緊急対応について相談を受けた事例です。 同社では、海外工場の生産ラインで不具合が発生し、日本本社の技術者が急遽現地へ出張することになりました。技術者は、現地でのトラブルシューティングに必要な交換用の試作部品と計測器をスーツケースに入れ、空港から出国しようとしました。 ところが、出国時の税関検査で呼び止められ、税...
仮の相談事例 電子部品メーカーの生産技術課長Aさんは、東南アジアの現地工場(海外子会社)から「製造装置のプログラムに不具合が出た。至急直してほしい」と連絡を受けました。 日本のベテラン技術者が、ZoomやTeams等のWeb会議をつなぎ、画面共有でソースコードを見ながら修正箇所の指示を出し、修正パッチデータも送って復旧させる予定です。Aさんは「同じグループ内だし、モノを輸出するわけでも...
並行輸入における商標権侵害の判断基準と実務上の対抗策に関する徹底解説
知的財産権侵害事案の対応はじめに―相談事例 【相談者】 千葉県内で輸入雑貨のセレクトショップを経営されているTさん。 Tさんは、欧州の人気キッチンウェアブランド「エトワール(仮名)」の日本国内における独占販売権を取得し、正規代理店として長年ビジネスを展開されてきました。 【相談内容】 「最近、インターネット上の大手モールにおいて、私が扱う『エトワール』の製品が、正規価格よりも三割以上安い価格で大...
「技術」の提供規制:非居住者への情報提供、指示、指導の具体例
輸出安全管理体制の構築リスト規制の対象は「貨物」だけでなく、その設計、製造、使用に必要な「技術」も含まれます。現代の企業活動において、国境を越えたデータのやり取りや、国内にいる外国人従業員への技術指導は日常的です。 しかし、これらの行為が外為法上の「技術の提供」とみなされ、無許可で実施されると、深刻な法令違反となるリスクがあります。 そこで本日は、弁護士の視点から、規制対象となる「技術の提供」が具体的にどのような行...
取引の顧客は誰ですか? 懸念顧客(ユーザー)の審査とエンドユース確認
輸出安全管理体制の構築輸出管理の実務において、「何を(貨物・技術)」輸出するかという該非判定と同じくらい重要なのが、「誰に(需要者)」「何のために(用途)」輸出するかという「取引審査」です。 特にキャッチオール規制への対応では、このプロセスがコンプライアンスの要となります。いくら製品が非該当(民生品)であっても、顧客がテロリスト支援国家の関連企業であったり、用途が兵器開発であったりすれば、その取引は中止するか、経...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。