輸出許可の取得漏れが判明した場合の自主申告対応 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

輸出許可の取得漏れが判明した場合の自主申告対応

【相談内容】

当社は、電子部品メーカーのコンプライアンス室です。先日、輸出管理に関する社内監査を実施したところ、3年前に輸出した特定のセンサー製品について、本来であれば経済産業大臣の輸出許可が必要だったにもかかわらず、許可を取得しないまま輸出していたことが判明しました。
当時の記録を確認すると、該非判定の際に法令の読み方を誤り、規制対象品であるにもかかわらず「非該当」と判断していたようです。輸出自体はすでに完了しており、現時点では税関や経済産業省から指摘を受けていません。
社内では、「今さら報告すれば、かえって処分を受けるだけではないか」「当局に見つかっていないなら、このまま記録を封印しておいた方がよいのではないか」という意見も出ています。このような場合、会社としてどのように対応すべきでしょうか。

【弁護士からの回答】

結論として、隠してはいけません。速やかに事実関係を整理し、経済産業省への自主的な通報・相談を行うべきです。
許可が必要な貨物を無許可で輸出していた場合、外為法違反となり得ます。JETROの安全保障貿易管理ガイドでも、外為法違反については刑事罰や行政制裁の対象になり得ること、また違反行為者だけでなく、法人にも罰金刑が科される場合があることが説明されています。
もっとも、該非判定ミスによる無許可輸出と、悪意をもって規制を回避した無許可輸出とでは、当局の評価は同じではありません。CISTECは、経済産業省の考え方として、自主管理の一環で違反を見つけて自主申告した場合には、基本的には再発防止指導を中心にするスタンスであり、故意・悪質性、法益侵害の程度、輸出者等遵守基準の遵守状況などを踏まえて処分に差がつけられると説明しています。
したがって、会社を守るために重要なのは、「発覚していないから黙っておく」ことではなく、「自社の監査で発見し、速やかに事実を把握し、再発防止策を講じ、自主的に当局へ説明する」ことです。 

1 隠蔽が最も危険である理由

「黙っていれば分からない」という発想は、コンプライアンス上も、リスク管理上も非常に危険です。
外為法違反は、税関の事後調査、経済産業省の事後審査、取引先への調査、通関データの確認、内部通報、退職者からの通報、海外当局・金融機関・取引先からの情報提供など、さまざまな経路で発覚し得ます。近年は、輸出管理に関する社内記録、通関記録、メール、受注データ、製品仕様、送金情報などが電子的に残っているため、過去案件であっても後日確認される可能性があります。
さらに、本件では「社内監査で違反を発見した」という事実がすでにあります。この段階で何もしなければ、単なる過去の判定ミスではなく、違反を認識した後に放置した、あるいは隠蔽したと評価されるおそれがあります。そうなると、当初のミスよりも、発見後の会社対応の悪質性が問題になります。
経済産業省の事後審査資料では、不正輸出が発覚した場合、事実関係の解明と再発防止が目的とされ、違反原因、実際の用途、事後審査への協力の程度などが処分決定の考慮要因になるとされています。逆にいえば、発見後に資料を隠す、社内記録を封印する、当局への説明を避けるといった対応は、協力的な姿勢とは評価されません。 

2 自主申告を行う意義

自主申告は、単に「許してください」と申し出る手続ではありません。会社の自浄作用を示し、法令遵守体制を立て直すための重要なプロセスです。
CISTECは、該非判定のミスによる無許可輸出と悪意ある無許可輸出は意味合いが異なり、経済産業省は、自主管理の一環で違反を見つけて自主申告する場合には、基本的に再発防止指導を中心にするスタンスであると説明しています。また、自主申告された案件については、法益侵害の程度、故意・悪質性、輸出者等遵守基準の遵守状況などを踏まえて処分に差をつける考え方が示されています。
もちろん、自主申告をすれば必ず処分が免除される、という意味ではありません。違反の内容、貨物の機微度、仕向地、最終需要者、実際の用途、件数、社内体制、発見後の対応によっては、警告、報告書提出、行政制裁、刑事告発等の可能性は残ります。CISTECも、違反原因や実際の用途等を考慮したうえで、刑事罰、行政制裁、警告、経緯書・報告書提出等の処分・対応が行われることがあると説明しています。しかし、隠蔽して後から発覚した場合と、自ら発見して早期に申告した場合とでは、会社の評価は大きく異なります。自主申告は、処分の軽重だけでなく、取引先・金融機関・株主・従業員に対して、会社が違反を放置しない体制を持っていることを示す意味があります。

3 直ちに行うべき初動対応

まず、関係資料を保全してください。該非判定書、当時の仕様書、パラメータシート、輸出許可要否の検討資料、注文書、契約書、インボイス、輸出許可書類、通関書類、社内稟議、メール、最終需要者・用途確認資料、出荷記録、法令改正履歴、監査記録などを削除・改変せずに保存します。
次に、同一製品・同一判定ロジックで輸出した案件が他にないかを調査します。本件が1件だけなのか、同じ誤判定が複数案件に波及しているのかで、当局への説明内容も再発防止策も変わります。
第三に、対象製品の現状を確認します。誰に輸出したのか、最終需要者は誰か、現在どこにあるのか、どのような用途で使用されているのか、軍事用途や懸念用途に転用されていないか、再輸出されていないかを確認します。経済産業省の事後審査資料でも、不正輸出された貨物・技術について、日本への回収も含め、懸念用途に用いられないことの確認が求められ、実際の用途は処分決定の大きな考慮要因であるとされています。第四に、発見後の出荷停止措置を検討します。同一製品または同一リスクのある製品について、許可要否が再確認できるまで輸出を一時停止することが必要です。違反のおそれを認識した後も同じ判定のまま出荷を続ければ、会社の悪質性を高める事情になり得ます。

4 経済産業省への報告で整理すべき内容

自主申告では、単に「過去に無許可輸出がありました」と伝えるだけでは不十分です。少なくとも、次の事項を整理して報告できるようにします。
事案の概要

  • 輸出者名
  • 対象貨物の名称、型式、仕様
  • 規制該当項番
  • 輸出日、数量、価格
  • 仕向地
  • 輸入者、荷受人、最終需要者
  • 最終用途
  • 本来必要だった許可の内容
  • 許可を取得していなかった理由

経緯

  • 引合いから出荷までの時系列
  • 該非判定を行った部署・担当者
  • 誰が承認したか
  • 当時参照した法令・資料
  • どの時点で誤りが発生したか
  • どのように社内監査で発覚したか

原因分析

  • 法令解釈の誤り
  • 仕様確認不足
  • 技術部門と輸出管理部門の連携不足
  • ダブルチェック不備
  • 最新法令の確認不足
  • 教育不足
  • 社内規程・手順書の不備
  • システム上の統制不足

影響範囲

  • 同一製品の過去輸出件数
  • 同一顧客向け輸出の有無
  • 同一判定ロジックを使った他製品の有無
  • 過去5年間の関連輸出の確認状況
  • 顧客・最終需要者・用途の現状確認結果

再発防止策

  • 該非判定フローの見直し
  • 技術部門による仕様確認の義務化
  • 輸出管理部門による二次審査
  • 規制該当可能性のある製品リストの整備
  • 法令改正時の再判定手続
  • 少額特例・包括許可利用時の承認強化
  • 教育・研修の実施
  • 内部監査の定期化
  • 輸出管理内部規程の改定
  • 経営層への報告体制
  • 是正措置の実施期限と責任者

経済産業省の事後審査資料でも、当該違法輸出に関する事項として、事案の概要、経緯、社内管理体制および違反の分析、過去5年間の輸出・技術提供に関する事項、再発防止策などが調査項目として示されています。

5 過去案件の横展開調査

本件が該非判定ミスである以上、同じ担当者、同じ法令解釈、同じ製品分類、同じ社内フローで処理された他案件にも誤りがある可能性があります。
経済産業省の事後審査資料では、無許可輸出・提供が発覚した場合、原則として過去5年間の社内すべての輸出・提供について外為法違反の有無を調査することになると説明されています。ただし、自主的に通報し、輸出管理規程を制定しているなど社内の輸出管理体制が確立され、事後審査に協力的である場合には、一部または全部について調査を免除することもあり得るとされています。
そのため、自主申告前後の段階で、少なくとも次の範囲を優先的に確認してください。

  • 同一センサー製品の全輸出案件
  • 同一シリーズ・派生品の輸出案件
  • 同じ該非判定書を流用した案件
  • 同じ担当者が判定した高リスク案件
  • 同じ法令項番に関係する製品群
  • 同じ仕向地・同じ需要者向け案件
  • 少額特例・包括許可を利用した案件
  • 技術提供、ソフトウェア提供、マニュアル提供の有無

調査範囲を広げることは負担ですが、後から別案件が発覚する方がはるかに不利です。初回報告では、判明済みの事実と、現在調査中の範囲を分けて説明し、追加判明事項を追って報告する形も考えられます。

6 報告書の品質が重要

自主申告においては、報告書の内容が極めて重要です。
不十分な報告書では、「担当者が間違えた」「今後注意する」といった抽象的な説明に終わりがちです。しかし、当局が確認したいのは、なぜ誤判定が起きたのか、同じ誤りが他にもないのか、再発防止策が本当に機能するのかという点です。
たとえば、再発防止策として「教育を徹底する」と書くだけでは足りません。誰に、いつ、どの内容を、どの頻度で教育するのか、理解度をどう確認するのか、教育後の判定プロセスをどう変更するのかまで落とし込む必要があります。
また、「ダブルチェックを行う」と書く場合も、誰が一次判定を行い、誰が二次審査を行い、どの資料を確認し、疑義がある場合にどの部署へエスカレーションするのかを明確にする必要があります。
輸出者等は、輸出者等遵守基準に従って輸出等を行う必要があり、リスト規制対象品目を扱う輸出者については、輸出管理体制の整備、該非確認手続、用途確認・需要者等確認、出荷確認、監査、研修、文書保存、法令違反時の報告・再発防止策などが基準として掲げられています。報告書では、これらの観点から、具体的な是正措置を示すことが重要です。 

7 社内で絶対にしてはいけないこと

本件で避けるべき行為は明確です。

  • 当時の該非判定書を改ざんする
  • 新たに作成した判定書を当時作成したように見せる
  • メールや監査記録を削除する
  • 関係者に口裏合わせを指示する
  • 取締役会・監査役・内部監査部門への報告を避ける
  • 同一製品の出荷を何事もなかったように継続する
  • 経済産業省や税関から問い合わせがあるまで何もしない
  • 担当者個人の責任にして組織的原因を検討しない

これらは、単なる法令違反対応の遅れではなく、隠蔽工作と評価される危険があります。隠蔽が疑われると、行政上の評価、刑事上の評価、取引先・社会からの信用に大きな悪影響を及ぼします。

8 取締役・経営層の関与

輸出許可の取得漏れは、現場担当者だけの問題ではありません。外為法違反の可能性がある以上、コンプライアンス室長は、速やかに経営層、法務部門、内部監査部門、必要に応じて監査役・監査等委員会に報告すべきです。
経営層が早期に関与し、出荷停止、調査範囲、当局相談、再発防止策、対外説明方針を決めることで、会社として一貫した対応ができます。逆に、管理部門内で情報を止めてしまうと、後に「会社として違反を知りながら放置した」と評価されるおそれがあります。
また、報告後は、法務・輸出管理・技術・営業・物流・経理を含む横断チームを作り、事実調査と再発防止を並行して進めるべきです。 

9 まとめ

本件では、記録を封印して「なかったこと」にしてはいけません。許可が必要なセンサー製品を該非判定ミスにより無許可で輸出していた場合、外為法違反となり得ます。外為法違反については、刑事罰や行政制裁の対象となる可能性があります。
一方で、自社の内部監査で違反を発見し、自主的に通報し、原因を分析し、再発防止策を講じることは、処分判断において重要な事情となります。CISTECは、経済産業省の考え方として、自主管理の一環で違反を見つけて自主申告する場合には、基本的に再発防止指導を中心にするスタンスであると説明しています。また、経済産業省の事後審査資料でも、自主的通報は処分または調査内容において考慮されるとされています。
直ちに、関係資料の保全、同種案件の調査、最終用途・最終需要者の確認、出荷停止の検討、原因分析、再発防止策の策定を進め、経済産業省へ自主的に相談・報告する方針を取るべきです。隠蔽は、違反そのものよりも会社に深刻なダメージを与えます。 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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