みなし輸出の概念と改正の本質 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

みなし輸出の概念と改正の本質

「みなし輸出」とは、簡単に言うと、外国に貨物を物理的に輸出するのではなく、日本国内で外国人に技術を提供する行為を、実質的に「輸出」と見なして規制する制度です。
2022年には、この「みなし輸出」制度に対して大幅な改正が行われました。
各企業や大学・研究機関にとっては改正への対応は非常に重要となります。

そもそも「みなし輸出」とは?

外為法では、技術提供に関する輸出規制の一環として、以下のような行為が「みなし輸出」として取り扱われることになります。
『日本国内において』、『外国人(非居住者)に対して』、『リスト規制等に該当する技術を』、『提供すること(閲覧、説明、共有など)』
たとえば、大学の研究室で外国籍の学生に機微技術を指導したり、外国人エンジニアに社内技術マニュアルを説明することが、「みなし輸出」として規制対象になる場合があります。

2022年改正の背景:「実態に即した規制」への転換

従来、みなし輸出の判断基準は「相手の国籍」(居住者であるのか、非居住者であるのか)に重きを置いていました。
しかしながら、次のような実態に対応しきれないという課題がありました。

  • ①外国人であっても、日本企業に長年勤務し、日本で生活基盤を有している者がいる
  • ②他方で、日本人であっても、外国政府・企業の影響下にある場合もある
  • ③外国政府による研究資金提供や、機関の背後関係が不透明な事例が増加している

このような現状に対応するため、2022年の改正では、国籍主義から脱却し、「実質的に外国の支配下にあるかどうか」を基準として判断されるようになりました。

改正後の判断のポイント

2022年に施行された改正により、以下のような者に対する技術提供も「みなし輸出」と判断される可能性があります。

  • ①外国法人の日本支社・研究所に勤務する日本人社員
  • ②外国資本が過半数以上を占める日本企業の職員
  • ③外国政府機関や軍事研究機関と密接な関係を持つ者
  • ④外国政府等から指揮・監督を受けるプロジェクト参加者

大学や研究機関は特に注意が必要です

2022年の制度改正で、特に影響を受けるのは大学や研究機関です。例えば、次のようなケースが実務上問題となり得ます。

  • ①外国人留学生に研究データを共有する前に、その国籍(居住者又は非居住者)や資金源をチェックしていない
  • ②外国政府から資金提供を受けた共同研究に、日本人スタッフが参加
  • ③外資系研究機関と連携している大学研究室で、機微技術を取り扱っている

これらはいずれも、「知らずに提供してしまった」という事態につながりかねません。
単純に「国籍で判定すればよい」という感覚は、今後は通用しないと理解すべきです。

弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

引き合い先の属性の確認事項

相談事例 化学品専門商社で営業を担当するAさんは、海外展示会後に中東所在を名乗る企業から高純度試薬の購入希望を受けました。 相手は会社名と担当者名、フリーメール、配送先候補住所のみを示し、公式サイトや登記情報が見当たりませんでした。 用途は「研究用」とだけ説明し、サンプル提供と見積を急かしていました。 Aさんは、取引を進めてよいか、社内でどのように審査し、どこまで確認できましたら次のステッ...

「リスト規制」とは? 自社製品が該当するかどうかの見極め方-輸出管理の第一歩は「製品を知る」こと

前回は、外為法違反が企業に及ぼす重大なリスクについて解説しました。 では、具体的にどのような手続きをとれば、そのリスクを回避できるのでしょうか。実務の第一歩は、自社が輸出しようとしている貨物や提供しようとしている技術が、規制の対象かどうかを確認する「該非判定(がいひはんてい)」です。 その入り口となるのが「リスト規制」です。リスト規制とは、輸出貿易管理令別表第1の1項から15項にリスト...

リスト規制とは ― 規制の仕組みと対象技術の考え方

外為法に基づく輸出管理制度の中心的な柱が、「リスト規制」です。 このリスト規制を正確に理解していなければ、該非判定やキャッチオール規制の判断も適切に行うことができません。 そこで、本日はリスト規制の仕組みと、その背後にある考え方を整理します。  リスト規制の概要 リスト規制とは、「特定の性能・仕様を有する物品や技術を、経済産業大臣の許可なく輸出・提供してはならない」と定める制度です。 貨...

海外取引における契約実務:輸出管理と知的財産権を守るための契約条項の解説

はじめに―相談事例 【相談者】 千葉県内で輸入雑貨のセレクトショップを経営されているTさん。 Tさんは、自社ブランドの海外展開をさらに加速させるため、東南アジアの有力な代理店候補であるA社との交渉を開始されました。 【相談内容】 「これまで輸出入の実務については色々と学んできましたが、いよいよ本格的な販売店契約(Distributorship Agreement)を締結す...

税関の輸出事後調査を受ける際の準備と対応

【相談内容】 当社は、電子機器を取り扱う商社です。先日、税関の事後調査部門から突然電話があり、「3年前に貴社が輸出した案件について、詳細を確認したいので来社したい」と連絡を受けました。 当社としては、特に違法な輸出をした認識はありません。当時も通常どおり通関業者を通じて輸出申告を行い、税関の許可を得て輸出したはずです。一部の案件では、少額特例なども利用していました。 もっとも、「調査」と...