共同研究契約と輸出管理~資金源・契約条件のチェックが重要です
輸出安全管理体制の構築外為法に基づく安全保障輸出管理において、技術の提供先や用途を正しく把握することが極めて重要です。その判断を左右する要素のひとつが、「研究費の資金源」や「共同研究契約の内容」です。
特に大学や研究機関では、外国政府や企業からの研究費提供や、国際共同研究契約の締結が日常的に行われており、契約書の内容によっては『みなし輸出』に該当してしまうリスクが高まります。本日は、それらの観点から輸出管理に必要なチェックポイントを解説します。
研究費の「出所」が規制対象の判断に影響する
外為法における「みなし輸出」の判定においては、単に相手の国籍や居住地だけでなく、外国政府・軍事機関等による『実質的な管理・影響下』にあるかどうかが重視されます。
そのため、以下のような研究費は要注意です。
- ①外国政府(例:中国科学院、ロシア科学アカデミーなど)からの助成金
- ②外国国営企業・軍需企業からの研究資金
- ③海外拠点を持つ外国資本の企業からの共同研究費
研究対象が直接的にはリスト規制に該当しない場合でも、相手側の属性や資金の出所がリスク評価に直結します。
共同研究契約で確認すべき条項
輸出管理上、契約書の内容次第で「技術の提供」の可否を判断することになります。
例えば、以下のような契約条項は注意が必要です。
- ①成果物の帰属・共同保有の規定
- 成果物のうち機微技術が外国側に共有される場合は、提供とみなされる可能性あります
- ②研究過程での情報交換に関する規定
- 設計図や研究データを相互に共有する条項があれば、技術提供の許可要否が問題になります
- ③成果公表の制限条項
- 一定期間の非公開制限がある場合、「一般に公開された情報」と見なされず、規制の例外扱いとなりません
- ④クラウド共有・アクセス管理の明記の有無
- 海外研究者に対するアクセス制限や監督の可否が問われます
- ⑤準拠法・紛争解決地
- 米国法や中国法準拠の契約の場合、域外適用リスクや日本法との齟齬にも注意が必要です
実務対応のポイント
- ①契約書チェックリストの導入
技術提供の有無・成果物の帰属・情報管理条項を体系的に確認 - ②法務部・外部専門家との連携
契約段階から輸出管理の観点を盛り込む - ③資金提供元の調査
学内の研究支援部門と連携し、出資元の背景を評価 - ④申請・記録の徹底
必要な場合はみなし輸出の許可を申請し、契約書や審査記録を保存(5年目安)
契約や資金は、表面的には「安全」に見えても、その中身次第で違反の温床にも、管理体制の要にもなり得ます。
大学・研究機関においては、研究の自由を確保しつつ、資金・契約の段階での輸出管理リスク評価を徹底することが、安全保障と学術の共存につながります。
弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。
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東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。