税関の輸出事後調査を受ける際の準備と対応 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

税関の輸出事後調査を受ける際の準備と対応

【相談内容】

当社は、電子機器を取り扱う商社です。先日、税関の事後調査部門から突然電話があり、「3年前に貴社が輸出した案件について、詳細を確認したいので来社したい」と連絡を受けました。
当社としては、特に違法な輸出をした認識はありません。当時も通常どおり通関業者を通じて輸出申告を行い、税関の許可を得て輸出したはずです。一部の案件では、少額特例なども利用していました。
もっとも、「調査」と言われると、何か違反を疑われているのではないか、犯罪扱いされているのではないかと不安です。税関の事後調査とは、通常の監査のようなものなのでしょうか。また、調査当日までにどのような書類を用意し、どのような態度で対応すべきでしょうか。 

【弁護士からの回答】

税関の事後調査は、輸出入を行う事業者に対して行われる行政調査の一種です。連絡があったからといって、直ちに「違反の証拠をつかまれている」「刑事事件として扱われている」と考える必要はありません。
ただし、軽く見てよい手続でもありません。税関の事後調査では、輸出申告や輸出管理が関税法その他の関係法令に従って正しく行われていたか、帳簿書類や社内記録に基づいて確認されます。JETROも、税関の事後調査について、通関後に税関職員が輸出者または輸入者の事業所等を訪問し、税関に申告された内容を帳簿や書類等により確認する制度であると説明しています。
輸出者に対する事後調査では、輸出管理体制や通関処理体制の構築を促し、輸出手続が関税法等の関係法令に従って正しく行われていたかを確認し、不適正な申告があれば適切な申告を行うよう指導することが目的とされています。したがって、必要以上に萎縮する必要はありませんが、事前準備をしないまま臨むことは避けるべきです。 

1 事後調査で確認される主なポイント

輸出事後調査では、主に次のような点が確認されます。
第一に、輸出申告の内容です。輸出許可書、インボイス、パッキングリスト、船荷証券・航空運送状、輸出申告書などをもとに、品名、数量、価格、仕向地、輸出者、荷受人、取引内容が実際の取引と整合しているかが確認されます。
第二に、通関処理体制です。通関業者にどのような情報を提供していたか、申告内容を自社でどの程度確認していたか、社内で誰が承認していたかが問題になります。「通関業者に任せていたので当社は分からない」という説明では不十分です。輸出者自身が、輸出申告や輸出管理の責任主体であることを前提に対応する必要があります。
第三に、外為法その他の他法令対応です。輸出貨物について該非判定を行っていたか、少額特例や包括許可を利用した場合に要件を満たしていたか、キャッチオール規制に関する用途確認・需要者確認を行っていたか、必要な許可・承認を取得していたかが確認されます。税関の輸出事後調査資料でも、非違事例として、輸出令に係る該非判定を行っていない、該非判定書類を保存していない、安全保障貿易管理体制が形骸化している、といった例が挙げられています。
第四に、帳簿書類・電子記録の保存状況です。輸出事後調査では、通常、調査開始日から遡って5年間が対象とされ、輸出取引の内容、決済関係、インボイス内容、輸出関係の帳簿・書類・電子媒体記録の保存状況、輸出管理や通関処理体制などが確認されます。 

2 3年前の案件を指定された場合の見方

税関が「3年前の特定案件」を指定してきた場合でも、必ずしも違反が確定しているわけではありません。事後調査では、一定期間の輸出実績の中からサンプル的に案件を選んで確認することがあります。
もっとも、特定の案件名や品名を挙げている場合には、税関側が何らかの確認ポイントを持っている可能性があります。例えば、次のような点です。

  • 申告品名と実際の商品内容にずれがある
  • 価格や数量の記載に不自然な点がある
  • HSコードや統計品目番号の分類に疑義がある
  • 少額特例の適用要件に疑義がある
  • 輸出令別表第1該当性やキャッチオール規制の確認状況を見たい
  • 仕向地、荷受人、最終需要者、用途に確認したい点がある
  • 過去の類似案件との申告内容にばらつきがある
  • 通関業者からの情報と社内資料が整合するかを確認したい

したがって、「何もしていないはずだから大丈夫」と構えるのではなく、指定案件を中心に、当時の判断過程を説明できる資料を整理しておくことが重要です。

3 準備すべき書類

調査対象案件について、少なくとも次の資料を準備してください。
通関・物流関係書類

  • 輸出許可書
  • 輸出申告書
  • インボイス
  • パッキングリスト
  • B/LAir Waybill、送り状
  • 運賃明細、保険料明細
  • 通関業者への依頼書・指示書
  • NACCS関連の申告控え
  • 仕向地、荷受人、配送先が分かる資料

取引関係書類

  • 契約書
  • 注文書、発注書、受注書
  • 見積書
  • 請求書
  • 支払・入金記録
  • 取引先とのメール
  • 仕様変更や納期変更に関するやり取り
  • 無償提供品、サンプル、交換品、修理返送品である場合の経緯資料

輸出管理関係書類

  • 該非判定書
  • パラメータシート
  • 仕様書、カタログ、図面
  • メーカー判定書
  • 項目別対比表
  • 取引審査票
  • 用途確認・需要者確認の記録
  • 外国ユーザーリストや制裁リストの確認記録
  • 少額特例を利用した場合の適用根拠資料
  • 包括許可を利用した場合の許可証・適用判断資料
  • 社内承認記録

社内体制関係資料

  • 輸出管理規程
  • 通関処理フロー
  • 輸出管理責任者・該非判定責任者の体制図
  • 教育・研修記録
  • 内部監査記録
  • 文書保存ルール
  • 当時の担当者・承認者が分かる資料

安全保障輸出管理の実務では、引合いから出荷・船積みまたは技術提供までの一連の関係書類が保存対象になり、注文者、審査票、該非判定書、許可申請書および添付書類、輸出通関関係書類、教育記録、事故報告書、打合せ議事録などが例示されています。

4 特に注意すべき「該非判定書の日付」

輸出事後調査で特に注意すべきなのが、該非判定書や取引審査票の日付です。
調査対象の輸出が3年前であるにもかかわらず、該非判定書の日付が調査通知後の日付になっている場合、税関からは「輸出時点では該非判定を行っていなかったのではないか」と見られる可能性があります。
もちろん、当時の判定根拠を整理し直すために、調査前に補足資料や説明メモを作成すること自体はあり得ます。しかし、その場合には、「当時作成された該非判定書」と「今回、調査対応のために作成した補足説明資料」を明確に区別してください。後から作成した資料を、あたかも当時から存在した判定書のように扱うことは絶対に避けるべきです。
該非判定は、取引前に実施する必要があります。安全保障輸出管理の解説資料でも、輸出許可が必要な貨物を輸出する際には輸出許可証が必要となるため、法令違反を防止するには取引前に該非判定を実施する必要があると説明されています。少額特例を使う場合でも、そもそもどの項番に該当するか、特例の対象となるかを確認していなければ、適切な適用判断はできません。 

5 少額特例を使っていた場合の確認事項

一部で少額特例を利用していたとのことですので、対象案件については、少額特例の適用要件を改めて確認してください。
特に、次の点を整理する必要があります。

  • どの規制項番に該当する貨物として判断したのか
  • 少額特例の対象となる項番・貨物だったのか
  • 契約金額・総価額の計算が正しかったか
  • 分割出荷により形式的に少額にしていないか
  • 同一契約・同一需要者・同一用途の扱いをどう判断したか
  • キャッチオール規制やインフォーム要件との関係を確認していたか
  • 少額特例を利用してよい仕向地・貨物だったか

少額特例は、「金額が小さいから輸出管理が不要になる」という制度ではありません。少額であっても、まず該非判定を行い、そのうえで特例の適用可否を確認する必要があります。CISTECFAQでも、国際郵便や国際宅急便であっても輸出であることに変わりはなく、外為法上の許可等が必要な貨物を許可等なく輸出してはならないと説明されています。

6 当日の対応姿勢

調査当日は、誠実かつ協力的に対応することが基本です。税関職員と対立的な態度を取る必要はありませんが、曖昧な記憶で断定的に回答することも避けるべきです。
特に、次の対応を徹底してください。

  • 質問には、分かる範囲で正確に回答する
  • 分からないことは「確認して後日回答します」と伝える
  • 推測や希望的観測で回答しない
  • 担当者個人の記憶だけに頼らず、資料に基づいて説明する
  • 税関からの質問内容と回答内容を社内メモに残す
  • 追加資料を求められた場合は、提出期限と範囲を確認する
  • その場で即答すべきでない法的判断は持ち帰る
  • 当時の資料と今回作成した説明資料を区別する

絶対に避けるべきなのは、「多分大丈夫です」「通関業者がやっていたので分かりません」「問題ないはずです」といった根拠のない回答です。後日、資料と異なることが判明すると、単なる記憶違いであっても、税関からの信頼を損ないます。
また、担当者だけで対応させるのではなく、管理部門、輸出管理部門、経理部門、必要に応じて通関業者や外部専門家が同席し、事実関係と法的判断を切り分けながら回答する体制を整えるべきです。

7 ミスが見つかった場合の対応

事前準備や調査の過程で、申告内容、該非判定、少額特例の適用、書類保存、取引審査にミスが見つかることがあります。その場合に最も避けるべきなのは、隠すことです。
単純な事務ミス、書類保存の不備、判断過程の記録不足であれば、指導や再発防止策の提出で済む可能性もあります。一方、ミスを隠す、資料を改ざんする、後から作った資料を当時の資料のように見せる、担当者間で口裏合わせをする、といった対応は、悪質性を強く疑われる原因になります。
ミスが見つかった場合には、次の順序で対応してください。

  1. 事実関係を社内で確認する
  2. 影響範囲を特定する
  3. 同種案件が他にもないか確認する
  4. 法令上の違反可能性を整理する
  5. 必要に応じて税関・経済産業省への相談方針を決める
  6. 再発防止策を作成する
  7. 税関に対して、事実と対応方針を正確に説明する

外為法違反の可能性がある場合には、税関対応だけでなく、経済産業省への相談・報告が必要になることがあります。輸出管理に関する資料でも、不正輸出の可能性が事後的に明らかになった場合には、関係資料を保全し、必要に応じて経済産業省に相談することが重要とされています。

8 事後調査後に行うべき社内改善

事後調査は、単にその場を乗り切るためのイベントではありません。調査をきっかけに、社内の輸出管理・通関管理体制を見直すべきです。
特に、次の点を確認してください。

  • 輸出案件ごとに必要資料が一元管理されているか
  • 該非判定の責任者と承認者が明確か
  • 判定日、判定根拠、法令版数が記録されているか
  • 少額特例や包括許可の適用判断が属人的になっていないか
  • キャッチオール規制の用途確認・需要者確認が記録化されているか
  • 通関業者への指示内容を社内で確認しているか
  • 電子メールや見積・受注情報が保存されているか
  • 輸出後に資料を検索できる状態になっているか

税関の事後調査で最も困るのは、違反があったかどうか以前に、「資料がない」「当時の判断者が退職している」「なぜその判断をしたか分からない」という状態です。日頃から、誰が、いつ、どの仕様を、どの法令に照らして、どのように判断したかを残す運用を整えることが重要です。

9 まとめ

税関の輸出事後調査は、必ずしも違反を前提とした刑事捜査ではありません。輸出者の事業所等を訪問し、輸出手続が関税法その他の関係法令に従って正しく行われていたか、帳簿書類等により確認する行政調査です。
もっとも、調査の結果、該非判定未実施、少額特例の誤用、必要許可の未取得、帳簿書類の保存不備、通関申告内容の誤りが見つかれば、指導、追加調査、行政対応、場合によっては外為法上の問題につながる可能性があります。特に、輸出事後調査では、輸出関係書類や電子記録の保存状況、輸出管理・通関処理体制が確認されます。
調査当日までに、輸出許可書、インボイス、パッキングリスト、B/L、契約書、注文書、メール、該非判定書、取引審査票、少額特例の適用根拠資料を整理し、当時の判断過程を資料に基づいて説明できる状態にしてください。分からない点は即答せず、確認して後日回答することが重要です。誠実に対応しつつ、推測で答えないことが、事後調査対応の基本です。 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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