調査の通知が届いたら~初動対応が重要です~
輸出事後調査対応ある日突然、経済産業省や税関から「輸出事後調査の実施について」と記された文書が届いたら、どのように対応すべきでしょうか。多くの企業にとって、この通知は驚きとともにプレッシャーを感じさせるものです。しかし、ここでの初動対応こそが、調査全体の成否を大きく左右します。
通知の内容と確認すべき事項
まず、通知文書を落ち着いて確認しましょう。通知には次のような情報が含まれているはずです。
- ①対象となる輸出取引の概要(貨物・技術・時期など)
- ②提出を求める資料(契約書、輸出許可、該非判定記録等)
- ③提出期限および連絡先
- ④面談、調査日の日程調整の案内
これらを整理し、担当部署や責任者を選任していきます。慌てて書類を準備した結果、誤った情報を提出してしまうと、意図的に虚偽の情報を報告した等とかえって不信感を与えかねません。
社内体制の確認と情報共有
輸出事後調査への対応は、総務や法務部門だけで完結するものではありません。
輸出実務担当者、営業担当者、技術部門など、輸出取引の関係者が横断的に関与する必要があります。通知が届いたら、直ちに以下のような体制を整えることが望ましいといえます。
- ①社内対応チームの編成
- ②事実関係の整理と関係部署へのヒアリング
- ③社内で保管されている関連資料の収集
対応経験のある弁護士への相談が効果的な理由
初動の段階で対応経験のある弁護士に相談することには、次のようなメリットがあります。
- ①調査対象となる輸出取引の法令適合性を第三者的に評価
- ②該非判定や取引審査などの論点に関する法的整理
- ③調査官に誤解を与えない資料作成や提出文書のリーガルチェック
- ④今後の手続きスケジュールの見通しと方針の確定
特に中小企業では、専門的な法令知識や輸出管理ノウハウが不足している場合が多いため、早期に外部専門家を巻き込むことで、リスクを最小限に抑え適切に対応を行うことが可能となります。
間違った初動が招くリスク
「通知を受けたこと自体が悪いこと」と受け止め、調査を過剰に畏怖したり、逆に過小評価して担当者だけで処理しようとするのは危険です。
以下のような事態を招くおそれがあります。
- ①曖昧な資料提出により、意図しない違反と見なされる
- ②証拠保全が不十分なまま調査が進む
- ③調査官とのコミュニケーションの失敗により誤解が拡大
こうした結果、是正指導や行政処分が科される可能性も否定できません。
誠実かつ慎重に、そして迅速に
輸出事後調査への対応において、初動の質は調査結果を大きく左右します。まずは冷静に通知内容を確認し、社内体制を整え、必要に応じて対応経験のある弁護士などの専門家の支援を受けることで、適切な対応が可能になります。
当事務所では、通知段階からの対応支援を行っておりますので、お困りの際はぜひご相談ください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
クラウド経由での技術提供と輸出管理~リモート時代の見落としやすいリスクとは~
輸出安全管理体制の構築コロナ禍を契機に、リモートワークやクラウド共有が急速に浸透しました。そのため、研究データや技術文書のやりとりをオンラインで行うことは今や当たり前ですが、その一方で、クラウド経由での情報共有が「技術の提供」として外為法の規制対象になるという認識は、未だ十分に広がっていません。 今回は、クラウドやオンラインツールを介したデータの共有が輸出管理においてどのように取り扱われるのか、また、実務でどのような...
従来の輸出管理といえば『物品の輸出』が中心でした。 しかし現代においては、クラウド共有やリモートワーク、外国人研究者との協働などにより『技術そのもの』が国外へ流出するリスクが急増しています。外為法はこうした『技術そのものの提供』も規制対象としていますが、企業現場ではまだ十分に理解されていない部分も多いのが実情です。 そこで本日は、無形技術輸出の定義とリスク、企業が講じるべき実務上の対応...
経営層の責任とガバナンス強化~輸出管理はトップの意識が重要です~
輸出安全管理体制の構築輸出管理というと「技術部門や実務担当の仕事」と捉えられがちですが、組織の最終的な責任は経営層にあります。実際に外為法違反が発覚した場合、処分対象となるのは企業・法人としての組織であり、その法的責任は経営者に及ぶという点は改めて留意する必要があるでしょう。 経営者は「知らなかった」では済まされません 外為法では、企業が行う輸出・技術提供について、法人全体の責任が問われる構造になっています。違...
輸出管理において、「技術や製品が何であるのか(該非判定)」と同じくらい重要なのが、「誰に」「何の目的で」提供するのかの確認です(いわゆる取引審査)。 これは外為法上、キャッチオール規制(用途・需要者規制)を踏まえた審査であり、リスト規制に該当しない物でも、許可が必要となる場合があります。 今回は、需要者・用途確認の具体的な実務方法と、チェックリストやテンプレートを活用した管理手法をご案内いたし...
第三国を経由した技術提供はどう扱われる?「間接的輸出」と外為法の適用範囲
輸出安全管理体制の構築グローバル化が進む現在、企業や大学が技術を提供する相手は、日本国内にとどまらず、複数国にまたがる関係者・子会社・共同研究機関に広がっています。中でも注意が必要なのが、「第三国を経由した技術の提供」です。 本稿では、外為法において第三国経由の技術提供がどのように規制されるか、また、企業・研究機関が取るべき対応をご紹介します。 第三国経由の提供が規制対象となる背景 外為法では、「技術提供」や...
東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。