輸出管理違反が発覚した場合のペナルティと刑事・行政処分 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

輸出管理違反が発覚した場合のペナルティと刑事・行政処分

「たかが書類のミスだろう」「少しルールを破っただけ」

もし輸出管理違反をそのように軽く考えているとしたら、それは企業の存続に関わる致命的な認識不足です。外為法違反に対する制裁は、年々厳罰化の一途をたどっています。

違反が発覚した場合、企業は「刑事罰」「行政制裁」「社会的制裁」という3つの甚大なダメージを同時に受けることになります。これらは単なる罰金で済む話ではなく、ビジネスの停止や信用の崩壊を招く「企業生命の危機」です。

1 刑事罰:懲役刑と巨額の罰金

まず、最も重いのが刑事責任です。無許可輸出や無許可技術提供を行った場合、個人の実行行為者(担当者や役員)に対しては、「10年以下の懲役」または「3000万円以下の罰金」、あるいはその両方が科される可能性があります。

さらに、法人(企業)に対しては、両罰規定により罰金刑が科されます。この罰金額の上限は「10億円」ですが、もし輸出・提供しようとした物の価格(技術の対価)の5倍が10億円を超える場合は、「価格の5倍」までの罰金が科されます。例えば、数億円規模の機械を無許可で輸出しようとすれば、数十億円の罰金を請求される可能性があり、これだけで倒産しかねない金額です。

2 行政制裁:輸出禁止処分によるビジネス停止

企業にとって、刑事罰以上に恐ろしいのが経済産業省による「行政制裁」です。代表的なものが「輸出等禁止処分」です。これは、一定期間(数ヶ月〜3年程度)、輸出や技術提供の業務を全面的、あるいは部分的に禁止するものです。

グローバルに展開するメーカーや商社にとって、海外への輸出が止まることは、売上がゼロになるだけでなく、世界中の顧客への供給責任を果たせなくなることを意味します。部品が届かなければ海外工場のラインも止まります。過去には、大手メーカーであっても数ヶ月の輸出禁止処分を受け、数十億円〜数百億円の損失を出した事例があります。さらに、役員の解任勧告や、包括許可の取り消しといった処分も併せて行われることが一般的です。

3 おわりに:予防コストは事故コストより遥かに安い

これらのペナルティは、決して他人事ではありません。「知らなかった」「悪気はなかった」という言い訳は通用せず、結果責任が厳しく問われます。 これだけの代償を払うリスクがあるならば、日頃から弁護士に相談し、輸出管理体制(ICP)を整備するためのコストなど安いものです。 当事務所では、万が一の事態を防ぐための予防法務に力を入れています。少しでも不安な点があれば、手遅れになる前にご相談ください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

内部調査のポイントと体制構築―事実確認とリスク把握のすすめ

輸出事後調査において、企業側がまず行うべきは『内部調査』です。税関(経済産業省)に提出する資料や説明内容の正確性を確保するには、社内での丁寧な事実確認と体制整備の構築が欠かせません。本日は、企業が行うべき内部調査の具体的な手順や、法的リスクを低減するための体制づくりの要点をご案内します。 内部調査の目的とは? 内部調査の目的は、主として次の3点にあります。 ①輸出に関する事実関係を正...

調査の通知が届いたら~初動対応が重要です~

ある日突然、経済産業省や税関から「輸出事後調査の実施について」と記された文書が届いたら、どのように対応すべきでしょうか。多くの企業にとって、この通知は驚きとともにプレッシャーを感じさせるものです。しかし、ここでの初動対応こそが、調査全体の成否を大きく左右します。 通知の内容と確認すべき事項 まず、通知文書を落ち着いて確認しましょう。通知には次のような情報が含まれているはずです。 ①対...

共同研究契約と輸出管理~資金源・契約条件のチェックが重要です

外為法に基づく安全保障輸出管理において、技術の提供先や用途を正しく把握することが極めて重要です。その判断を左右する要素のひとつが、「研究費の資金源」や「共同研究契約の内容」です。 特に大学や研究機関では、外国政府や企業からの研究費提供や、国際共同研究契約の締結が日常的に行われており、契約書の内容によっては『みなし輸出』に該当してしまうリスクが高まります。本日は、それらの観点から輸出管理に必要なチ...

M&Aで見落とされがちな輸出管理リスク

センサー技術を持つメーカー買収時に確認すべき法務デューデリジェンスのポイントとは? 【相談内容】 製造業の経営企画部門に所属しています。事業拡大の一環として、優れたセンサー技術を持つ中堅メーカーであるA社の買収を検討しています。A社は国内販売だけでなく海外展開にも積極的で、海外売上比率は約40%に達しています。輸出先は中国、欧米、アジア各国など幅広く、世界中の顧客に製品を販売しているようです。...

海外出張時のハンドキャリー輸出トラブルを回避した事例

1 事案の概要 自動車部品メーカーから、海外工場で発生した設備トラブルへの緊急対応について相談を受けた事例です。 同社では、海外工場の生産ラインで不具合が発生し、日本本社の技術者が急遽現地へ出張することになりました。技術者は、現地でのトラブルシューティングに必要な交換用の試作部品と計測器をスーツケースに入れ、空港から出国しようとしました。 ところが、出国時の税関検査で呼び止められ、税...