輸出管理内部規程(ICP)の策定と社内体制整備のステップ |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

輸出管理内部規程(ICP)の策定と社内体制整備のステップ

「輸出のたびに担当者が慌てて書類を作っている」、「詳しいことはあの担当者しか知らない(属人化)」

貴社の輸出管理業務は、このような状態になっていないでしょうか?

輸出管理は、個人の知識や注意深さに依存すべきではありません。組織として継続的かつ確実に法令を遵守するための仕組み、すなわち「輸出管理内部規程(ICP: Internal Compliance Program)」の策定と運用も有用な方法の一つです。

今回は、経済産業省も推奨しているICPの構築について、そのメリットと具体的な整備ステップを解説します。

1 ICP(輸出管理内部規程)とは何か

ICPとは、企業が外為法等の輸出関連法規を遵守するために定める社内ルールのことです。単なるマニュアルではなく、トップの責任、組織体制、監査、教育などを包括したコンプライアンス・プログラムを指します。

ICPを策定し、経済産業省に届け出て受理されることには、大きなメリットがあります。それは「包括許可」の取得が可能になる点です。通常の輸出では、契約のたびに「個別許可」を申請する必要がありますが、管理体制がしっかりしていると認められた企業(CP受理企業)は、一定の範囲内でまとめて許可(一般包括許可や特別一般包括許可)を受けることができ、リードタイムの大幅な短縮と事務コストの削減が可能になります。

2 効果的なICPに必要な「6つの要素」

形だけの規程を作っても意味がありません。実効性のあるICPには、以下の要素が不可欠です。

①代表者の責任明記:輸出管理の最高責任者は社長であることを明記し、トップダウンでコンプライアンスに取り組む姿勢を示すこと

②組織体制の構築:営業部門(受注)、技術部門(該非判定)、管理部門(審査・出荷管理)の役割分担と、相互牽制(チェック機能)が働く体制を作ること

③手続規定の整備:引合該非判定取引審査受注・契約出荷判定といった業務フローごとに、誰が何を承認するかを具体的に定めること。

④監査:ルール通りに運用されているか、定期的に内部監査を行うこと。

⑤教育:全従業員および関係者に対して、定期的な研修を行うこと。

⑥文書管理:該非判定書や取引審査票などの関連書類を、法令で定められた期間(原則7年など)確実に保存すること。

 3 おわりに:企業防衛の要として

万が一、輸出違反が発生してしまった場合でも、しっかりとしたICPがあり、日頃から誠実に運用していたという実績があれば、当局からの処分が軽減される要因の一つになり得ます(情状酌量)。逆に、体制がなければ「組織的な違反」として厳罰に処される恐れがあります。

ICPは「パスポート」であると同時に、企業を守る「保険」でもあります。当事務所では、ICPの策定支援から、経済産業省への届出サポート、社内研修の講師派遣まで、体制整備をトータルでサポートいたします。まずは現状の課題診断から始めてみませんか。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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