技術輸出とデータ管理の実務 ― 役務提供の管理 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

技術輸出とデータ管理の実務 ― 役務提供の管理

従来の輸出管理といえば『物品の輸出』が中心でした。

しかし現代においては、クラウド共有やリモートワーク、外国人研究者との協働などにより『技術そのもの』が国外へ流出するリスクが急増しています。外為法はこうした『技術そのものの提供』も規制対象としていますが、企業現場ではまだ十分に理解されていない部分も多いのが実情です。

そこで本日は、無形技術輸出の定義とリスク、企業が講じるべき実務上の対応を解説します。

技術提供とは何か

上記のとおり、外為法上、「輸出」には物品の持ち出しだけでなく「国外に対する技術の提供」が含まれます。

ここでいう「技術」とは、図面、設計書、ソフトウェア、データベース、口頭でのノウハウ説明などを含み、形のない情報も対象となります。

具体例としては、

①メール添付で海外の研究者に設計図を送る

②クラウド上に格納したデータに外国からアクセスできる状態にする

③日本国内で外国人研究者(非居住者)に技術指導を行う

といった行為には特に注意が必要です。

実務に潜むリスク

技術提供は、物品輸出よりも「気づきにくい」点が大きなリスクといえます。

たとえば、

①クラウドサービスのサーバーが海外に設置されている場合、自動的に国外提供となることがある

②外国人社員や留学生に通常業務の一環で情報を提供する場合も「輸出」扱いになる

③リモート会議で画面共有した設計情報が国外に伝わることも該当する

つまり、現代の業務環境では「日常的な情報共有」が技術提供に該当するリスクを孕んでいるのです。

実務対応のポイント

企業が無形技術輸出リスクを管理するためには、次のような対応が必要です。

①アクセス権限管理

クラウドやサーバーのアクセス制御を厳格に行い、海外からの不正アクセスや外国人ユーザーへの不適切な権限付与を防ぐ。

②データ分類とラベル付け

重要情報を「一般情報」「管理対象情報」「規制対象情報」などに分類し、適切にラベルを付与して扱う。

③暗号化とログ管理

データ送受信の際は暗号化を徹底し、誰がどの情報にアクセスしたかを記録に残す。

④教育研修

エンジニアや研究者に対し、無形技術輸出の概念を周知する。特に「口頭説明も輸出にあたる」点を理解させることが重要。

⑤海外子会社・研究拠点とのルール統一

グループ全体で同一のデータ管理ルールを適用し、現地任せにしない。

まとめ

技術の提供は「形が見えない輸出」であり、企業にとって最も管理が難しい分野です。

クラウドやリモートワークの普及により、情報が国境を越えるハードルは格段に下がっています。だからこそ、アクセス権限管理・データ分類・教育研修といった仕組みを通じて、無形の情報を守る体制が不可欠です。

輸出管理の最前線は「有形から無形へ」と移りつつもあり、企業のコンプライアンス対応もそれに合わせて進化させる必要があります。

 

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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