輸出管理の基本と違反事例―企業が陥りやすい盲点とは |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

輸出管理の基本と違反事例―企業が陥りやすい盲点とは

輸出事後調査において、税関(経済産業省)が特に重視するのが「法令違反の有無」です。その判断基準となるのが、外為法や関連する政省令に基づく輸出管理規制です。企業としては、そもそもどのような行為が違反となりうるのかを理解しておくことが、リスク管理の第一歩となります。

外為法に基づく輸出管理の基礎知識

日本の輸出管理制度は「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づき構築されています。主なポイントは次のとおりです。

①特定の貨物・技術の輸出に許可が必要(リスト規制)
②キャッチオール規制
用途・需要者によってはリスト規制の非該当品でも許可が必要となる
③みなし輸出の規制
特定類型該当性の判断も重要となる
④各判定の適切な実施と記録の保管

違反事例から学ぶポイント

以下は実際に摘発・処分の対象となったケースを参考にした代表的な違反事例です。

【事例1】該非判定の未実施による無許可輸出
某メーカーが汎用製品の輸出にあたり、「非該当」と判断していたが、実際はリスト規制に該当しており許可が必要だった事例。
製品仕様の確認不足が原因で、無許可輸出となり行政指導の対象に。

【事例2】外国人研究員への技術提供(みなし輸出)を軽視
ある大学で、外国人留学生に対して特定技術を教示していたことが問題視された。
輸出には該当しないと誤解していたが、技術提供が「みなし輸出」に該当する場合があることを失念していた事例。

中小企業に多い「知らなかった」リスク

「うちは兵器を扱っていないから大丈夫」と思われる企業も多いですが、規制対象は必ずしも軍事物資に限られません。特に、以下のような製品は注意が必要です。

  • ①センサー・測定装置・ソフトウェア
  • ②電子部品・半導体
  • ③化学品・高性能素材
  • ④大学・研究機関が開発した先端技術

こうした製品の中には、意図せず規制対象となるものが含まれていることがあり、該非判定を怠ると違反と見なされます。

制度理解が違反予防の第一歩です

輸出事後調査で違反が見つかれば、是正措置の要請はもちろん、行政処分や刑事罰に発展する可能性もあります。調査で問われるのは「意図」だけではなく「体制や記録」もです。
そのため、「知らなかった」「ついうっかり」は通用しません。
自社の製品や技術が規制対象かどうか不安な場合は、専門家の助言を受け、該非判定や取引審査を制度的に行える体制づくりを急ぎましょう。当事務所では、製品の該非判定支援や社内研修も含めた包括的サポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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