提出書類の作成と注意点~信頼を勝ち取る文書対応とは~ |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

提出書類の作成と注意点~信頼を勝ち取る文書対応とは~

輸出事後調査の通知を受けた企業が最初に直面するのが、書面での資料提出です。
ここでの提出内容は、調査全体の基礎資料となるため、記載の正確性や信頼性が問われます。誤記・曖昧な表現・事実誤認があると、企業の信用を損なうばかりか、違反と見なされる(疑いを高める)リスクがあります。
本日は、提出書類作成の際に企業が押さえるべき重要なポイントを解説します。

提出を求められる代表的資料

調査の通知とともに、具体的な提出資料の一覧が示されることが一般的です。以下はよく求められる項目です。

  • ①輸出品目に関する該非判定資料(判定書・分類根拠)
  • ②輸出先企業との契約書や発注書
  • ③輸出実績を示すインボイス、B/L、その他の通関書類
  • ④用途確認・エンドユーザー確認に関する記録(取引審査に関する資料)
  • ⑤社内輸出管理規程や社内研修資料など体制に関する文書

これらは単なる形式的書類ではなく、輸出管理の適正性を裏付ける証拠として扱われます。

書類提出の際に注意すべきポイント

提出文書は、調査官にとって「初めて企業を知る材料」であり、ここでの印象が今後のやり取りを左右します。以下の点を特に意識しましょう。

①誤記や齟齬を防ぐ、原因を確認する

複数の書類間で記載内容が矛盾しないよう、事実関係の整合性を確認しましょう。たとえば、契約書に記載された出荷数量とインボイスの内容に食い違いがあると、調査官の不信を招きます。

②用語・規制根拠を明確にする

「非該当」と記載する際は、その根拠となる輸出令別表番号や判定基準を併記することが望まれます。また、キャッチオール判定を実施した場合は、いつ・誰が・どのような観点で判断したかを明示します。

③ 曖昧な表現は避ける

たとえば、「相手先が通常の民間企業だと思った」など、憶測ベースの記述は避けるべきです。「○○年○月○日に受領した会社案内によれば、民間企業と認識した」など、事実に基づいた説明が必要です。

弁護士によるレビューの必要性

輸出管理に不慣れな中小企業では、「とりあえず分かる範囲で書類を出しておく」という対応になりがちですが、これは非常に危険です。専門的な観点から見れば、勘違いを誘発する行為であり、思いもよらぬ方向で受け止められる内容になってしまうことすらあります。
提出前に弁護士によるレビューを受けることで、

  • ①表現の誤解を防ぎ、文書の法的適正性を確保
  • ②該非判定の根拠が妥当かどうかの再確認
  • ③是正措置の必要性を含めた対応方針の明確化

といった、リスク最小化と信頼性の向上が図れます。

提出書類の控えと保全も忘れずに~書類提出は信頼構築の第一歩~

提出書類は、原則として全て写しを取り、提出日・提出先を記録して保管しておきましょう。万一、当局との間で見解の相違が生じた際、企業側で提出内容を確認できる体制がなければ、反論すら困難になります。
提出書類は、調査のスタート地点でありながら、企業の誠実性と体制整備状況を端的に示すものでもあります。「ただ出す」のではなく、「信頼を得る書類」を意識して作成することが、スムーズな調査対応と将来的なリスク回避につながります。
当事務所では、提出書類作成の段階からレビュー・添削を行い、調査対応をトータルでサポートしております。お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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