貨物別に見る規制品目の具体例と注意点その2~化学物質編~ |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

貨物別に見る規制品目の具体例と注意点その2~化学物質編~

化学物質や化学製品は、その用途によっては大量破壊兵器や化学兵器の開発に利用されるおそれがあるため、外為法による輸出規制の重要分野の一つとされています。
中小の化学メーカーや大学・研究機関が開発・取り扱う製品にも、規制対象となるものが多く含まれており、正確な該非判定の実施が不可欠です。

外為法における化学物質の規制枠組み

リスト規制で対象となる大量破壊兵器の原材料や化学兵器の前駆体となる物質の具体例としては以下のようなものがあります。

  • ①リン化合物、フッ素化合物、マスタードガス関連物質
  • ②ナトリウムアジド、トリメチルホスフィン等の有機金属化合物
  • ③高純度化学薬品(研究開発・製造用)

キャッチオール規制(用途・需要者ベースの規制)

リスト規制に該当しない化学物質であっても、輸出先や用途にリスクがあると判断された場合には事前の許可が必要となります。
例えばですが、一般的な試薬や工業用溶剤であればリスト規制には該当しないものの、軍需企業向けに使用される場合には規制対象です。

実務上、注意が必要な化学関連製品の事例

  • ①大学・研究機関向け試薬(高純度・特注品)
  • ②爆薬の前駆体(硝酸、過酸化水素、硫酸など)
  • ③半導体製造用のエッチングガス
  • ④化学合成装置に使用される触媒・溶媒
  • ⑤バイオ分野で使用される特殊酵素や染色試薬

これらは一見「民生用」と思われがちですが、二重用途物資(デュアルユース)として規制の対象になり得ますので注意が必要です。

化学関連製品における該非判定

化学関連製品における該非判定では、以下のような情報を把握することが出発点となります。

  • ①化学名称(IUPAC名)とCAS番号
  • ②純度(%)や濃度
  • ③物質の構造式・分類
  • ④調製形態(液体、気体、混合物)
  • ⑤混合物の場合、各成分の含有割合

化学関連製品は、輸出管理の担当者ではなかなか理解が難しい場合も多く、該非判定が難解な分野の一つと言えます。

専門家との連携、教育体制の整備が必要不可欠です

化学関連製品の該非判定は、成分分析や化学知識が不可欠なため、技術者・研究者と輸出管例えば、マニュアルを社内・研究室に配布・共有することや、技術提供審査委員会を設置し、難解な判定については複数名で検討を加えることが有効です。

弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

外為法上の「用途」:汎用品の軍事転用リスクの考え方

外為法に基づく安全保障貿易管理において、「用途」という概念は、リスト規制とキャッチオール規制の双方で非常に重要な意味を持ちますが、その解釈と役割は異なります。 特に、汎用品が兵器開発に転用されるリスク、すなわち「デュアルユース」のリスクを判断する上で、「用途」の理解は不可欠です。 本日は、弁護士の視点から、外為法上の「用途」の考え方を整理し、リスト規制における用途の考慮の仕方と、キャッチオール...

リスト規制とは ― 規制の仕組みと対象技術の考え方

外為法に基づく輸出管理制度の中心的な柱が、「リスト規制」です。 このリスト規制を正確に理解していなければ、該非判定やキャッチオール規制の判断も適切に行うことができません。 そこで、本日はリスト規制の仕組みと、その背後にある考え方を整理します。  リスト規制の概要 リスト規制とは、「特定の性能・仕様を有する物品や技術を、経済産業大臣の許可なく輸出・提供してはならない」と定める制度です。 貨...

リスト規制とキャッチオール規制:二つの柱の役割と相違点

安全保障貿易管理の中核をなすリスト規制とキャッチオール規制は、車の両輪のように機能することで、デュアルユース(軍民両用)の貨物や技術の不適切な流出を防いでいます。 しかし、この二つの規制は、その規制のアプローチと企業に求められる対応において、決定的な相違点があります。 本日は、弁護士の視点から、この二つの規制がそれぞれどのような役割を担い、企業の実務においてどのように区別して対応すべきかを解説...

輸出管理違反が発覚した場合のペナルティと刑事・行政処分

「たかが書類のミスだろう」「少しルールを破っただけ」 もし輸出管理違反をそのように軽く考えているとしたら、それは企業の存続に関わる致命的な認識不足です。外為法違反に対する制裁は、年々厳罰化の一途をたどっています。 違反が発覚した場合、企業は「刑事罰」「行政制裁」「社会的制裁」という3つの甚大なダメージを同時に受けることになります。これらは単なる罰金で済む話ではなく、ビジネスの停止や信用...

経営者が知っておくべき「輸出管理」の基本と法的リスク―海外展開に潜む「見えない地雷」

グローバル化が進む現代において、製造業や商社に限らず、多くの企業が海外との取引を行っています。自社の優れた製品や技術を世界へ広めることは素晴らしいビジネスチャンスですが、そこには「輸出管理(安全保障貿易管理)」という法的なハードルが存在することを、どれだけの経営者が正確に認識しているでしょうか。 「うちは兵器を作っているわけではないから関係ない」「小規模な取引だから大げさな手続きは不要だろう...