メーカーの非該当証明書があれば安心?確認すべき輸出管理上の責任
輸出安全管理体制の構築商社や販売会社が海外向けに製品を販売・輸出する際、メーカーから「非該当証明書」や「該非判定書」を取得することがあります。
非該当証明書を取得していると、「メーカーが非該当と判断しているのだから、このまま輸出しても問題ない」と考えてしまうケースがあります。
しかし、これは注意が必要です。
メーカーの非該当証明書は、通常、メーカーが把握している製品単体の仕様を前提に、外為法上のリスト規制に該当するかどうかを示す資料です。
輸出者が行うべき確認責任を、すべてメーカーに移転するものではありません。
この記事では、メーカーの非該当証明書の役割と限界、商社・販売会社・輸出者が確認すべき実務上のポイントについて解説します。
目次
非該当証明書とは
非該当証明書とは、輸出しようとする貨物や提供しようとする技術について、外為法上のリスト規制に該当しないこと、すなわち「非該当」であることを示す資料です。
実務上は、メーカーが自社製品について、輸出貿易管理令別表第1や外国為替令別表、貨物等省令などに基づき、該当・非該当を判定し、その結果を記載した書面として発行することがあります。
商社や販売会社にとって、メーカーの非該当証明書は重要な参考資料です。
特に、技術仕様や性能値を把握しているのはメーカーであることが多いため、メーカーの判定情報は、輸出管理上の確認において有用です。
もっとも、非該当証明書は、あくまでリスト規制に関する判断資料であり、輸出取引全体について問題がないことを保証するものではありません。
メーカーの非該当証明書の役割
メーカーの非該当証明書には、主に次のような役割があります。
- 製品の型式や仕様を前提としたリスト規制の確認結果を示す
- 輸出者が該非判定を行う際の参考資料となる
- 税関や関係当局から確認を求められた場合の説明資料となる
- 社内の輸出管理記録として保存できる
- 商社・販売会社がメーカーに仕様確認を行った証跡となる
このように、非該当証明書は輸出管理実務において有用な資料です。
しかし、非該当証明書を取得していることと、輸出者として十分な確認を行ったことは同じではありません。
非該当証明書だけで安心できない理由
メーカーの非該当証明書だけで安心できない理由は、大きく分けて3つあります。
- 証明書の対象範囲が実際の輸出品と一致しないことがある
非該当証明書は、通常、特定の製品名、型式、仕様、バージョンを前提に作成されています。
そのため、実際に輸出する製品と証明書の対象製品が一致しているかを確認する必要があります。
たとえば、次のような場合には注意が必要です。
- 型式が一部異なる
- オプション機能が追加されている
- 特注仕様になっている
- ソフトウェアのバージョンが異なる
- 付属品や構成部品が証明書の対象外である
- 証明書発行後に仕様変更が行われている
製品名が同じであっても、型式や仕様が異なれば、該非判定の結論が変わることがあります。
そのため、メーカーの非該当証明書を受領した場合でも、対象範囲と実際の輸出品を照合することが重要です。
- 組込み・改造・機能追加により前提が変わることがある
メーカーの非該当証明書は、多くの場合、メーカーが出荷する製品単体を前提にしています。
しかし、商社や販売会社、または輸出者側で、その製品を他の装置に組み込んだり、機能を追加したり、ソフトウェアを変更したりする場合には、メーカー判定をそのまま利用できないことがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 非該当の部品を複数組み合わせて装置として輸出する
- メーカー製品に自社開発の制御ソフトウェアを搭載する
- 海外顧客向けに特別な仕様変更を行う
- 既存製品に通信機能、暗号機能、測定機能などを追加する
- 製品に技術資料、図面、ソースコードを添付して提供する
このような場合、メーカーの非該当証明書が示しているのは、あくまで元の製品単体についての判断です。
輸出者は、実際に輸出する完成品・構成品・ソフトウェア・技術資料を含めて、改めて確認する必要があります。
- 非該当証明書はキャッチオール規制まで保証しない
特に重要なのは、非該当証明書が、通常、キャッチオール規制の判断まで保証するものではないという点です。
非該当証明書は、一般的にはリスト規制への該当性を示す資料です。
つまり、「輸出貿易管理令別表第1の1項から15項に該当しない」「外国為替令別表の1項から15項に該当しない」といった判断を示すものです。
しかし、リスト規制に非該当であっても、用途、需要者、仕向地、商流などによっては、キャッチオール規制の確認が必要です。
したがって、メーカーの非該当証明書がある場合でも、輸出者は別途、次のような点を確認しなければなりません。
- 最終用途は何か
- 最終需要者は誰か
- 仕向地はどこか
- 仲介業者や販売代理店は誰か
- 再輸出や第三国移転の予定はないか
- 経済産業省からインフォームを受けていないか
- 取引経緯に不自然な点はないか
「非該当証明書があるから輸出できる」と短絡的に判断するのではなく、リスト規制とキャッチオール規制を分けて確認することが重要です。
非該当証明書を受領した際に確認すべき事項
メーカーから非該当証明書を取得した場合、少なくとも次の点を確認しておくことが望ましいです。
| 確認項目 | 確認すべき内容 |
| 対象製品 | 実際に輸出する製品名・型式・モデルと一致しているか |
| 仕様・性能 | 輸出品の仕様、性能、オプション構成と一致しているか |
| ソフトウェア | 付属ソフトウェア、制御プログラム、バージョンが対象に含まれているか |
| 技術資料 | 図面、仕様書、マニュアル、ソースコード等が対象に含まれているか |
| 構成部品 | 部品、付属品、組込み品が対象範囲に含まれているか |
| 法令基準日 | どの時点の法令に基づく判定か |
| 判定根拠 | どの項番、どの要件を確認したかが記載されているか |
| 発行者 | メーカーの担当部署、責任者、発行日が明確か |
| 有効性 | 仕様変更や法令改正後も利用できる内容か |
特に、法令基準日が古い証明書には注意が必要です。
輸出管理に関する規制リストは改正されることがあるため、過去に非該当と判断された製品でも、現在の法令で同じ結論になるとは限りません。
追加確認が必要となる取引上のサイン
非該当証明書を取得していても、取引自体に不自然な点がある場合には、追加調査が必要です。
たとえば、次のような事情がある場合です。
- 注文数量が通常の取引規模と比べて不自然に多い
- 取引先が最終用途の説明を拒む
- 最終需要者を明らかにしない
- 契約上の購入者と配送先が異なる
- 代金支払者、購入者、荷受人が複雑に分かれている
- 仕向地と実際の使用地が異なる可能性がある
- 第三国への再輸出が予定されている
- 取引先の事業内容と製品用途が一致しない
- 通常とは異なる輸送経路を指定される
- 軍事転用が疑われる用途を示唆する発言がある
このような事情がある場合、「メーカーの非該当証明書があるから問題ない」と判断するのは危険です。
輸出者として、用途確認、需要者確認、仕向地確認、商流確認を行い、必要に応じて取引を保留し、追加資料を求めることが重要です。
商社・販売会社・輸出者の責任
商社や販売会社は、自社で製品を製造していないため、「メーカーが非該当と言っている以上、自社では判断できない」と考えることがあります。
しかし、輸出を行う主体である以上、輸出者としての確認責任があります。
もちろん、メーカーの技術判断を参考にすることは実務上重要です。
しかし、輸出者は、メーカー資料を鵜呑みにするのではなく、自社の取引内容に照らして合理的に確認する必要があります。
特に輸出者が確認すべきなのは、次の2つです。
- 製品・技術の確認
メーカーの非該当証明書が、実際に輸出する製品、仕様、型式、ソフトウェア、技術資料をカバーしているか。 - 取引内容の確認
最終用途、最終需要者、仕向地、商流、再輸出先などに懸念がないか。
メーカーが把握しているのは、主に製品仕様です。
一方で、輸出者が把握すべきなのは、実際の取引内容です。
この役割分担を誤ると、リスト規制には非該当であっても、キャッチオール規制や取引審査の観点でリスクを見落とすことがあります。
実務上おすすめの管理方法
非該当証明書を適切に活用するためには、単に証明書を保管するだけでは不十分です。
実務上は、次のような資料と組み合わせて保存・管理することが有効です。
- メーカー発行の非該当証明書
- 製品仕様書
- カタログ
- 型式・バージョン情報
- パラメータシート
- 項目別対比表
- 自社の取引審査票
- 用途確認書
- 需要者確認書
- 仕向地・配送先確認資料
- 再輸出の有無に関する確認書
- 社内承認記録
- 追加確認を行った場合のメール・面談記録
これらを一体として保存しておくことで、後日、税関や関係当局から確認を求められた場合にも、どのような根拠で輸出可能と判断したのかを説明しやすくなります。
「証明書を取得したか」より「合理的に検証したか」が重要
輸出管理の実務で重要なのは、単に「メーカーの非該当証明書を取得したか」ではありません。
より重要なのは、その証明書を自社の輸出取引に照らして合理的に検証したかです。
たとえば、次のような確認を行っていれば、実務上の説明力は高まります。
- 証明書の対象製品と実際の輸出品を照合した
- 型式、仕様、ソフトウェア、付属品の範囲を確認した
- 法令基準日が古くないか確認した
- 判定根拠の記載を確認した
- 自社で追加した機能や組込み部分について別途確認した
- キャッチオール規制の観点から用途・需要者確認を行った
- 懸念点がある場合には追加資料を取得した
- 確認結果を社内で記録・保存した
このように、メーカー資料を自社判定の参考資料として位置付け、取引審査の記録と組み合わせて管理することが望ましいです。
東京・全国の輸出管理、非該当証明書、税関対応のご相談は有森FA法律事務所へ
有森FA法律事務所では、東京都港区赤坂を拠点に、全国の法人・個人事業主の皆様から、輸出管理、該非判定、非該当証明書の確認、キャッチオール規制、税関対応、輸出事後調査に関するご相談をお受けしています。
メーカーの非該当証明書を取得している場合でも、その内容が実際の輸出取引に適合しているか、キャッチオール規制の確認が十分か、社内記録として適切かについては、慎重な検討が必要です。
輸出前の確認に不安がある場合や、税関・関係当局から問い合わせを受けている場合には、お早めにご相談ください。
まとめ
メーカーの非該当証明書は、輸出管理上、重要な参考資料です。
しかし、それだけで輸出者の確認責任がすべて果たされるわけではありません。
商社・販売会社・輸出者は、非該当証明書について、対象製品、型式、仕様、ソフトウェア、法令基準日、判定根拠などを確認する必要があります。
また、非該当証明書は通常、リスト規制に関する判断資料であり、キャッチオール規制まで保証するものではありません。輸出者は、最終用途、最終需要者、仕向地、商流、再輸出先などを独自に確認する必要があります。
大切なのは、「証明書を取得したか」ではなく、「その証明書を合理的に検証し、取引全体として輸出可能かを確認したか」です。
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東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。