「リスト規制」とは? 自社製品が該当するかどうかの見極め方-輸出管理の第一歩は「製品を知る」こと |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

「リスト規制」とは? 自社製品が該当するかどうかの見極め方-輸出管理の第一歩は「製品を知る」こと

前回は、外為法違反が企業に及ぼす重大なリスクについて解説しました。

では、具体的にどのような手続きをとれば、そのリスクを回避できるのでしょうか。実務の第一歩は、自社が輸出しようとしている貨物や提供しようとしている技術が、規制の対象かどうかを確認する「該非判定(がいひはんてい)」です。

その入り口となるのが「リスト規制」です。リスト規制とは、輸出貿易管理令別表第11項から15項にリストアップされた品目に該当するかどうかを判断する制度です。多くの経営者や担当者が「うちは武器を作っていないから関係ない」と誤解しがちですが、このリスト規制の範囲は想像以上に広く、一般的な民生品も数多く含まれています。

1 リスト規制の構造と対象品目

リスト規制は、大きく分けて「武器そのもの」と「軍事転用可能な汎用品(デュアルユース品)」の2種類を対象としています。

まず「1項」は、銃器、弾薬、戦車、戦闘機などのいわゆる「武器」です。これらは当然ながら厳格に規制されており、原則として輸出は許可されません。

問題となるのは「2項から15項」に含まれる汎用品です。ここには、原子力、化学兵器、ミサイルなどの開発に用いられる恐れがあるものに加え、先端材料、加工機械、エレクトロニクス、通信機器、センサーなどが含まれています。

例えば、高強度の炭素繊維は、ゴルフクラブや釣竿に使われる素材ですが、ミサイルの機体や遠心分離機のローターにも転用可能です。また、高性能な工作機械は、自動車部品の加工だけでなく、兵器製造のための精密加工にも利用できます。暗号機能を持つソフトウェアなども規制対象となり得ます。

これらは「用途」に関係なく、「スペック(仕様・性能)」が一定の基準を超えていれば規制対象(該当)となります。つまり、民生用として販売する場合でも、ハイスペックな製品であれば許可が必要になるのです。

2 判定の難しさと落とし穴

リスト規制の該当・非該当を判断するには、政省令で定められた詳細な技術スペック(貨物等省令)と、自社製品の仕様を一つひとつ照らし合わせる必要があります。

例えば、「集積回路」一つをとっても、使用温度範囲、耐放射線性、演算速度などのパラメータによって該当・非該当が分かれます。「なんとなく大丈夫だろう」という感覚的な判断は通用しません。技術部門と連携し、正確なスペック表や仕様書(エビデンス)に基づいて判定を行う必要があります。

よくある落とし穴は、「部分品(パーツ)」や「付属品」です。完成品が規制対象外であっても、組み込まれているセンサーや、同梱される暗号化ソフトが単体でリスト規制に該当するケースがあります。また、過去に判定した製品であっても、法改正によって規制値(閾値)が変わっている可能性があるため、輸出の都度、最新の法令に基づいて確認しなければなりません。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

輸出管理違反が発覚した場合のペナルティと刑事・行政処分

「たかが書類のミスだろう」「少しルールを破っただけ」 もし輸出管理違反をそのように軽く考えているとしたら、それは企業の存続に関わる致命的な認識不足です。外為法違反に対する制裁は、年々厳罰化の一途をたどっています。 違反が発覚した場合、企業は「刑事罰」「行政制裁」「社会的制裁」という3つの甚大なダメージを同時に受けることになります。これらは単なる罰金で済む話ではなく、ビジネスの停止や信用...

「技術」の提供規制:非居住者への情報提供、指示、指導の具体例

リスト規制の対象は「貨物」だけでなく、その設計、製造、使用に必要な「技術」も含まれます。現代の企業活動において、国境を越えたデータのやり取りや、国内にいる外国人従業員への技術指導は日常的です。 しかし、これらの行為が外為法上の「技術の提供」とみなされ、無許可で実施されると、深刻な法令違反となるリスクがあります。 そこで本日は、弁護士の視点から、規制対象となる「技術の提供」が具体的にどのような行...

キャッチオール規制と企業の実務対応 ― 「疑わしいときは止まる」の原則

外為法による輸出管理の中でも、企業にとって最も実務上の負担が大きいのが「キャッチオール規制」です。 これは、リスト規制品目に該当しない製品であっても、輸出先や最終用途によっては規制対象となる制度です。平たく言えば「品目に載っていなくても危険性が存在するなら止める」という考え方であり、企業は常にエンドユーザーや用途の確認を怠らない体制を構築する必要があります。 本日は、キャッチオール規制の仕...

輸出管理内部規程(ICP)の策定と社内体制整備のステップ

「輸出のたびに担当者が慌てて書類を作っている」、「詳しいことはあの担当者しか知らない(属人化)」 貴社の輸出管理業務は、このような状態になっていないでしょうか? 輸出管理は、個人の知識や注意深さに依存すべきではありません。組織として継続的かつ確実に法令を遵守するための仕組み、すなわち「輸出管理内部規程(ICP: Internal Compliance Program)」の策定と運用も有...

輸出管理における社内監査と記録管理

輸出管理体制を整備し、社員への教育やチェックリストを導入していても、「それが正しく機能しているかどうか」を定期的に点検しなければ、知らぬ間にリスクが蓄積してしまいます。実際に外為法違反で行政指導を受けた組織には、「仕組みはあるが、運用されていなかった」というケースが少なくありません。 そこで今回は、輸出管理体制を継続的に維持・改善するための「社内監査の実施方法」と「記録管理のあり方」をご紹介いた...