サボテン種子オイル配合美容液の輸入差止め |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

サボテン種子オイル配合美容液の輸入差止め

【相談の背景】

依頼者は、従業員約10名の化粧品輸入販売会社です。海外メーカーから天然由来成分を配合した美容液を仕入れ、日本国内で販売する予定でした。

問題となった商品は、南米のメーカーから新たに輸入した「サボテン種子オイル配合」の美容液です。依頼者としては、オーガニック原料を使用した高付加価値商品として、発売時期に合わせて販売計画を進めていました。

ところが、商品が成田空港に到着した後、税関で貨物が留め置かれました。税関からは、配合成分にサボテン科植物由来の原料が含まれている可能性があるため、ワシントン条約、すなわちCITES上の規制対象ではないかとの指摘を受けたのです。

税関から求められた対応は、大きく分けて二つでした。

一つは、当該原料がワシントン条約の規制対象である場合に必要となるCITES輸出許可書を提出すること。もう一つは、規制対象外であることを客観的な資料により証明することです。

依頼者は、すぐに南米のメーカーへ確認しました。しかし、メーカー側は「オーガニック原料であり、違法なものではない」「これまで他国にも輸出している」と説明するのみで、日本の税関が求める法的書類や公的証明書を提出しようとしませんでした。

その結果、貨物は空港で保管されたままとなり、保管費用が日々発生する状況になりました。さらに、必要書類を期限内に提出できなければ、輸入許可が下りず、最悪の場合には商品を廃棄しなければならない可能性もありました。

依頼者にとっては、商品代金や輸送費の損失に加え、発売予定日の延期、取引先への納品遅延、販売機会の喪失といった事業上のリスクも大きい案件でした。

【問題となった法的ポイント】

本件で中心となったのは、サボテン科植物がワシントン条約上の規制対象となり得る点です。

ワシントン条約は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する条約です。規制対象となる動植物やその加工品を国境を越えて取引する場合、原則として、輸出国の管理当局が発行する輸出許可書などの書類が必要になります。

化粧品の場合、完成品そのものは一般的な美容液であっても、配合されている植物由来成分が規制対象に該当する可能性があります。特に、サボテン科植物はワシントン条約の附属書に掲載されているものがあり、種、抽出物、オイルなどの形で取引される場合でも、由来や加工の程度によって確認が必要となることがあります。

海外メーカーが「天然」「オーガニック」「現地では問題なく販売されている」と説明していても、それだけで日本の輸入規制をクリアできるわけではありません。日本の税関や関係当局は、商品の表示やメーカーの口頭説明ではなく、成分表、製造工程、原料の由来、輸出国の許可書など、客観的な資料に基づいて判断します。

本件でも、税関は、サボテン科植物由来の成分が含まれている以上、ワシントン条約上の規制対象に該当しないこと、または必要な許可を取得していることを明確に示すよう求めました。

【弁護士による初動対応】

依頼を受けた弁護士は、まず税関からの通知内容、インボイス、パッキングリスト、成分表、商品のラベル、メーカーとのやり取りを確認しました。

そのうえで、単に「オーガニック商品である」と説明するだけでは不十分であり、税関が求めているのは、ワシントン条約上の規制対象性に関する法的・客観的な資料であると整理しました。

次に、南米のメーカーに対し、依頼者に代わって英語で正式なレターを送付しました。レターでは、日本の税関がどのような理由で貨物を留め置いているのか、サボテン科植物がワシントン条約の附属書IIに関連して問題となり得ること、必要書類が提出されなければ日本での輸入・販売ができないことを具体的に説明しました。

また、メーカーに対しては、単なる任意の協力依頼ではなく、取引継続に関わる重大な問題であることを明確に伝えました。適切な書類を提出できない場合、日本市場での販売が不可能となり、依頼者としても今後の取引を継続できない可能性があることを示し、迅速な対応を求めました。

この段階で重要だったのは、メーカー側に「日本側が過剰に心配しているだけ」と受け止められないようにすることでした。海外メーカーの中には、自国や他国で問題なく輸出できていることを理由に、日本でも同様に通関できると考えているケースがあります。しかし、国ごとに輸入時の確認実務や必要書類の運用は異なります。そのため、日本の税関で現実に貨物が止まっていること、そして法的根拠に基づく対応が必要であることを、書面で明確に伝える必要がありました。

【メーカーからの書類取得】

弁護士からのレター送付後、メーカー側の対応は変わりました。メーカーは現地の輸出担当者や関係機関に確認を行い、当該原料に関する資料の収集を開始しました。

その結果、輸出国の管理当局が発行するCITES輸出許可書の原本を取得することができました。これにより、少なくとも輸出国側でワシントン条約上必要な手続きが行われていることを示すことが可能となりました。

もっとも、CITES輸出許可書を取得できれば直ちに通関できるとは限りません。税関に対しては、書類の内容が対象商品と対応していること、対象となる原料がどのように商品に使用されているのか、輸入する美容液と許可書上の記載が整合していることを説明する必要があります。

そこで、弁護士は、メーカーから成分表、原料の仕様書、製造工程図、原料の由来に関する説明資料を追加で取得しました。そして、今回輸入する美容液に配合されているサボテン種子オイルが、違法に採取された野生種のサボテンに由来するものではなく、人工繁殖されたサボテン由来の原料であることを説明できるよう、資料を整理しました。

このように、単に許可書を提出するだけではなく、許可書、成分表、製造工程、原料由来の説明を一つの流れとして整合させることが、税関対応では重要になります。

【税関および経済産業省への対応】

弁護士は、取得したCITES輸出許可書、成分表、製造工程図、原料由来に関する資料をもとに、税関に対する説明資料を作成しました。

説明資料では、問題となっている成分がどの原料であるか、その原料がどの植物に由来するか、当該植物がどのような形で管理・栽培されているか、輸出国でどのような許可手続きが行われたかを整理しました。

また、税関から追加質問があった場合に備え、メーカーに確認すべき事項をあらかじめリスト化し、回答の齟齬が出ないようにしました。輸入者、メーカー、税関の間で説明が食い違うと、審査が長期化するおそれがあります。そのため、提出資料の内容とメーカーの説明が一致しているかを事前に確認することが不可欠でした。

さらに、日本側の手続きとして、経済産業省に対する輸入公表品目の事前確認手続きも並行して進めました。ワシントン条約関連の輸入では、税関だけでなく、経済産業省の確認が問題となる場合があります。必要書類の不足や記載の不整合があると、手続きが差し戻され、発売スケジュールに大きな影響が出ます。

そこで、弁護士は、提出書類の記載内容、商品名、数量、原料名、輸出者・輸入者の情報、許可書の記載との対応関係を確認し、不備がない形で手続きを進めました。あわせて、依頼者の発売予定日が迫っていることも踏まえ、可能な限り迅速に処理してもらえるよう、必要な説明を行いました。

【解決結果】

貨物の留め置きから約1か月を要しましたが、最終的に輸入許可が下り、依頼者は商品を国内倉庫へ引き取ることができました。

これにより、廃棄処分という最悪の事態を回避できただけでなく、予定していた発売時期にも間に合わせることができました。依頼者は、取引先への納品遅延や販売機会の喪失を最小限に抑えることができ、事業上の損失拡大を防ぐことができました。

また、本件では、今回の通関対応だけで終わらせず、再発防止策も講じました。

具体的には、南米のメーカーに対し、次回以降の出荷時には、船積み前にCITES輸出許可書その他必要書類を必ず準備すること、成分や原料の由来に変更がある場合には事前に通知すること、日本側で追加資料が必要となった場合には速やかに協力することを契約条件として合意させました。

これにより、依頼者は、今後同種の商品を輸入する際に、税関で同じ問題が再発するリスクを大きく下げることができました。

【弁護士のコメント】

化粧品の輸入では、海外メーカーの法規制に関する認識が日本の実務と大きくずれていることがあります。メーカーが「現地では合法」「オーガニックだから問題ない」「他国にも輸出している」と説明していても、日本の輸入者がその説明をそのまま信じてしまうのは危険です。

特に、植物由来成分を含む化粧品では、ワシントン条約、薬機法、食品・化粧品関連規制、表示規制など、複数の規制が同時に問題となることがあります。輸入時に税関で止まってから対応を始めると、保管費用、発売延期、廃棄リスク、取引先への説明対応など、損失が一気に拡大します。

重要なのは、輸入契約や発注の段階で、規制対応をメーカーの義務として明確にしておくことです。具体的には、ワシントン条約に関する許可書の取得、原料由来資料の提出、成分変更時の事前通知、日本の行政機関や税関から照会があった場合の協力義務などを、契約書や発注条件に盛り込んでおくべきです。

また、税関や関係省庁とのやり取りでは、感覚的な説明ではなく、条約・法令上の根拠、成分と原料の対応関係、製造工程、輸出国当局の許可内容を整理して説明する必要があります。専門的な資料を短期間で整え、行政機関に対して一貫した説明を行うことで、通関が認められる可能性を高めることができます。

化粧品輸入ビジネスでは、商品の魅力や販売戦略だけでなく、原料規制への対応も重要なリスク管理の一部です。新しい原料や海外由来の天然成分を扱う場合には、輸入前の段階で必要書類と規制該当性を確認しておくことが、安定した販売体制を築くうえで不可欠です。

 

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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