法務部門の役割と弁護士のサポート ― 輸出管理体制を強化するために
輸出安全管理体制の構築輸出管理は営業部門や技術部門の課題と考えられがちですが、実際には法務部門が中心となり、組織横断的に関与すべきテーマです。
さらに、複雑化する国際環境や頻繁な法改正に対応するためには、外部弁護士のサポートを得ることも極めて有効です。
本日は、法務部門が果たすべき役割と、弁護士による支援のあり方についてご紹介します。
法務部門の役割
①規制該非判定の支援
技術部門が判断に迷う場合、法務部門が外為法や関連通知を踏まえて該非判定をサポートします。単なる技術的判断にとどまらず、法的観点を交えることで誤りを防げます。
②契約書への輸出管理条項の盛込み
取引基本契約、秘密保持契約、共同研究契約などには、輸出管理遵守条項を設けることが望ましいです。これにより、取引先に輸出管理義務を負わせ、リスクを分散させることが可能になります。
③社内規程の整備
法務部門は輸出管理規程や取引審査フローを整備し、責任分担を明確化する役割を担います。規程は形式的なものではなく、実務に即した内容であることが重要です。
④教育・研修の推進
輸出管理違反の多くは「教育不足」に起因します。法務部門が中心となり、実際の違反事例を題材にした研修を企画することで、現場担当者の理解を深められます。
弁護士のサポートが有効な場面
①複雑な該非判定
国際レジームや法改正が絡む案件では、専門弁護士の見解を踏まえることで判断の確実性が高まります。
②契約書のリーガルチェック
輸出管理条項の妥当性やリスク分担が適切かを、弁護士の視点で確認することが有効です。
③行政対応
経済産業省への事前相談や違反発覚時の対応は、専門弁護士の助言があることで企業のリスクを最小化できます。
④社内体制構築の支援
弁護士は規程整備や教育研修の設計にも関与できます。外部の視点を取り入れることで、実効性ある体制が構築可能です。
実務上のシナジー
法務部門と弁護士が連携することで、企業の輸出管理はより堅牢になります。
たとえば、社内で検討した契約条項を弁護士が修正し、法令上リスクを減らした水準にする。あるいは、社内教育で使う教材を弁護士と共同で作成し、最新の違反事例や判例を盛り込む。こうした取り組みは、単なる法令遵守を超えた「競争力あるコンプライアンス体制」につながります。
まとめ
輸出管理は、営業や技術部門に任せきりにすべきものではなく、法務部門が中心的に関与し、全社的な仕組みとして運用すべき課題です。
さらに、複雑化する国際情勢に対応するためには、外部弁護士の専門知識と経験を積極的に取り入れることが有効です。法務部門と弁護士の連携により、企業は法令遵守を徹底するだけでなく、国際社会からの信用を確保し、持続的成長を支える強固な輸出管理体制を築くことができるでしょう。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
是正措置の提案と再発防止策の提示~信頼回復に向けた実効的アプローチ
輸出事後調査対応輸出事後調査の結果、違反の可能性が示唆された場合、企業には「是正措置報告書」の提出や「再発防止策」の提示が求められることがあります。これは単なる形式的対応ではなく、企業のコンプライアンス体制の信頼性を回復・強化するための重要なステップです。 そこで本日は、是正措置と再発防止策を検討・策定する上でのポイントをご案内します。 是正措置とは何か? 是正措置とは、調査で認識された問題点について、...
輸出事後調査において、企業側がまず行うべきは『内部調査』です。税関(経済産業省)に提出する資料や説明内容の正確性を確保するには、社内での丁寧な事実確認と体制整備の構築が欠かせません。本日は、企業が行うべき内部調査の具体的な手順や、法的リスクを低減するための体制づくりの要点をご案内します。 内部調査の目的とは? 内部調査の目的は、主として次の3点にあります。 ①輸出に関する事実関係を正...
近年、大学や研究機関に対しても、外為法に基づく安全保障輸出管理の強化が求められています。特に、外国人研究者の受入れや国際共同研究、研究過程におけるクラウド利用が進む中で、『学術研究と法令遵守の両立』は避けて通れない課題でしょう。 本日は、大学・研究機関における輸出管理体制の構築ポイントを、他の一般企業とは異なる実情を踏まえてご紹介いたします。 なぜ大学・研究機関が外為法の規制対象となるのか...
外為法に基づく安全保障輸出管理は、単なる形式的な手続きではなく、国家の安全と企業の存続に直結する重大な制度です。この対応を怠った場合、仮に違反の意図がなかったとしても、重いペナルティを受ける可能性があります。 今回は、実際の違反事例をもとに、企業や大学が直面しうるリスクと損失の大きさ等をご紹介します。 違反が発覚した際の主な法的リスク 外為法に違反した場合、以下のような法的措置が科される...
外為法に基づく輸出管理では、「貨物の輸出」、「技術の提供」の行為そのものが規制対象ですが、具体的にどのような場面で許可が必要になるかは、取引の類型によって異なります。また、一定の条件を満たす場合には、「許可不要」となる例外規定も存在します。 本稿では、見落としやすい取引類型と許可要否の判断のポイントを整理し、実務で注意すべき点をご案内します。 「取引の類型」とは何か? 輸出管理の実務では...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。