再調査・再発防止計画のフォローアップ~改善の継続こそ信頼醸成につながります~
輸出事後調査対応輸出事後調査の対応が一段落しても、企業としての義務が終わるわけではありません。
違反が認定された場合、当局から「再発防止計画」の提出や、その後の実施状況に関するフォローアップが求められることがあります。また、改善が不十分と判断されれば「再調査」が実施されることもあります。本稿では、再調査やフォローアップ対応の重要性と、企業が取るべき実効的措置についてご案内します。
再調査が行われるケースとは?
再調査は、当初の調査で是正措置が講じられたにもかかわらず、当局が次のような懸念を持った場合に行われることがあります。
- ①再発防止策の実効性に疑義がある
- ②改善が名目だけで形骸化している
- ③同種のミスや違反が再発した
再調査では、過去の調査結果と現在の実態との「ギャップ」が問われることになり、初回調査以上に厳しい目が向けられることは覚悟した方がよいでしょう。
再発防止計画の策定と提出のポイント
当局から再発防止計画の策定・提出を求められた場合、以下の要素を盛り込む必要があります。
- ①再発リスクの原因分析と教訓
- ②改善策の具体的内容(誰が、いつ、何を、どのように)
- ③実施スケジュールとフォロー体制
- ④継続的な評価・見直しの枠組み
単なるチェックリスト的な内容ではなく、企業の業態・業種・体制に即した実行可能な計画であることが求められます。
フォローアップ体制の構築
再発防止計画を「実行し続ける」ためには、社内に以下のような体制を整備する必要があります。
- ①輸出管理責任者の設置と経営層によるモニタリング
- ②定期的な監査(自部署によるチェックではなく第三者的視点で)
- ③教育・研修の実施記録と理解度評価
- ④輸出関連記録の電子化・一元管理
当初の調査で見つからなかった運用上の課題も、実務を通じて明らかになることがあります。継続的なフォローが企業の信頼を守ります。
弁護士が関与する意義
再発防止計画やその実行状況は、いわば「企業の誠実性と継続的努力」の証です。弁護士が関与することで、
- ①改善策が法令に即しているかの確認
- ②文書内容の説得力や実効性のブラッシュアップ
- ③フォローアップ監査の実施支援
- ④当局対応への立ち合い・説明補助
といった形で、実効性と信頼性を高める支援が可能です。
「継続する姿勢」こそが最も重要です
輸出事後調査への対応は、単発的な危機対応ではなく、企業としてのコンプライアンス体制を根本から見直し、継続的に強化していく契機です。形式的な報告ではなく、「実態として守れる仕組み」を整えることこそが、再調査のリスクを回避し、対外的な信頼を築く鍵となります。
当事務所では、再発防止計画の策定から実施支援、フォローアップまで、継続的な伴走支援を提供しています。再発防止を本気で進めたい企業の皆様、ぜひご相談ください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
輸出管理の現場で誤解されやすく、かつ違反リスクが高い論点が、技術提供に関する取扱いです。とりわけ、研究開発型の中小企業や大学・研究機関では、外国人との共同研究や技術指導、交流などが日常的に行われており、知らず知らずのうちに法令違反を犯してしまうリスクが潜んでいます。 今回は、「技術の提供」とは何か、そしてどのように規制されているのかを整理します。 「技術の提供」とは何か、輸出管理の対象は「...
輸出事後調査の通知を受けた企業が最初に直面するのが、書面での資料提出です。 ここでの提出内容は、調査全体の基礎資料となるため、記載の正確性や信頼性が問われます。誤記・曖昧な表現・事実誤認があると、企業の信用を損なうばかりか、違反と見なされる(疑いを高める)リスクがあります。 本日は、提出書類作成の際に企業が押さえるべき重要なポイントを解説します。 提出を求められる代表的資料 調査の通知...
大学・研究機関における輸出管理の留意点 ― 学問の自由と安全保障の両立
輸出事後調査対応輸出管理は企業だけの問題ではありません。 大学や研究機関においても、最先端の研究開発や外国人研究者との共同研究の場面では、常に「外為法」が適用される可能性を留意する必要があります。 特に無形の技術提供が輸出とみなされる点は、研究者にとって直感的に理解しにくいことも多く、違反リスクを高めてしまう一つの要因となっています。 本日は、大学・研究機関における輸出管理の特徴と、学問の自由を...
外為法における「輸出許可制度」の全体像~リスト規制とキャッチオール規制の基本~
輸出安全管理体制の構築外為法に基づく輸出管理にとは、国家の安全を脅かすおそれのある貨物や技術が、無許可で海外に流出しないようにするための制度であり、日本企業・大学・研究機関を含むすべての「居住者」に適用されます。 本稿では、リスト規制とキャッチオール規制という2つの柱を中心に、輸出許可制度の構造の大枠をご説明いたします。 許可が必要な輸出とは? 輸出許可制度では、「経済産業大臣の許可」が必要となるケースが定め...
近年、大学や研究機関に対しても、外為法に基づく安全保障輸出管理の強化が求められています。特に、外国人研究者の受入れや国際共同研究、研究過程におけるクラウド利用が進む中で、『学術研究と法令遵守の両立』は避けて通れない課題でしょう。 本日は、大学・研究機関における輸出管理体制の構築ポイントを、他の一般企業とは異なる実情を踏まえてご紹介いたします。 なぜ大学・研究機関が外為法の規制対象となるのか...
東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。