行政処分・刑事罰の可能性とその防衛策~企業と経営者を守るためにできること |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

行政処分・刑事罰の可能性とその防衛策~企業と経営者を守るためにできること

輸出事後調査において違反が認定されると、企業は行政処分や刑事罰の対象となることがあります。違反が重大である場合、経営者や担当者個人が責任を問われる可能性もあり、企業にとっては重大な危機となり得ます。
そこで本日は、行政処分・刑事罰の種類や適用事例、そして法的防衛策についてご案内します。

行政処分の種類とその影響

外為法に基づく行政処分には以下のような種類があります。

  • ①指導・注意(最も軽度。是正の努力で収束することも)
  • ②警告(法令違反の事実があるとされ、記録が残る)
  • ③輸出禁止命令(期間限定)(一定期間、特定貨物・技術の輸出を禁止)
  • ④事業停止命令や輸出業者登録の取消し

行政処分を受けると、企業の社会的信用が大きく低下し、取引先や金融機関、取引先国当局との関係にも影響を与えかねません。

刑事罰の可能性と責任の所在

違反の態様が悪質である場合、刑事罰が科されることもあります。外為法違反に関する刑罰は以下のとおりです。

  • ①無許可輸出:10年以下の懲役または3000万円以下の罰金(法人の場合は10億円以下)
  • ②過失でも刑罰対象となる場合がある(重過失の場合出)

責任は法人のみならず、経営層・担当役職員にも及ぶ可能性があります。特に、規程の不備や教育不足を放置していた場合、経営者責任が問われることもあります。

防衛策①調査段階からの誠実な対応

違反が疑われた段階から、当局は企業の対応姿勢を重視します。
調査協力を拒む、または虚偽の説明を行うと、それ自体が処分の加重要素になります。逆に、調査段階から誠実に対応し、是正に努めた場合は、処分軽減の考慮対象となります。

防衛策②対応経験のある弁護士による助言と交渉

調査が進む中で違反が明らかになった場合でも、弁護士による関与により以下のような対応へのサポートが可能です。

  • ①違反行為の範囲の明確化と限定
  • ②故意・過失の不存在の主張(刑事責任の回避)
  • ③是正措置・改善計画の提出による処分軽減に向けた試み
  • ④不服申立て・審査請求等の手続支援

防衛策③企業全体のリスク管理体制の見直し

事後調査は、一時的な危機であると同時に、組織としての輸出管理を根本から見直す好機でもあります。処分を回避できなかった場合でも、再発防止体制の構築を早期に進めることで、次回以降のリスクを抑えることができます。

行政処分や刑事罰のリスクを過小評価することは非常に危険です。一方で、事前・初期段階から適切な対応を講じることで、そのリスクは大きく低減させることが可能です。
当事務所では、行政処分対応・刑事責任への予防的支援も含め、企業防衛を全力でご支援いたします。経営者の方や担当者の方で、少しでもご不安がある場合は、ぜひ早めにご相談ください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

社内教育・研修の重要性と実践方法

輸出管理の体制を整備しても、それが現場で正しく運用されていなければ、実効性はゼロです。とりわけ外為法における該非判定やみなし輸出の判断は、第一には現場の担当者が日々の業務の中で適切に対応できるかどうかにかかっています。 今回は、輸出管理における社内教育・研修の重要性と、実務に即した研修プログラムの設計方法をご紹介いたします。 なぜ社内教育が重要なのか? 外為法違反の多くは、「制度を知らな...

貨物別に見る規制品目の具体例と注意点その3~部品・素材編~

精密部品や工業素材は、航空・宇宙・軍事・電子分野に転用可能な「デュアルユース(民生・軍事両用)」の代表的なものです。 特に中小製造業が多くを担っている高精度部品・金属材料・加工素材等は、外為法上の規制対象に該当することがあり、輸出時には慎重な該非判定が求められます。 規制対象となりやすい部品・素材の例 外為法のリスト規制では、完成品だけでなく、その構成要素である部品や素材も明確に規制対象...

輸出管理とは?~外為法を順守した輸出の重要性~

近年、安全保障上の観点からの輸出管理が企業、大学・研究機関にとって極めて重要な課題となっています。 特に国際的な緊張の高まりや、先端技術の軍事転用リスクへの懸念等が強まる中、日本においても「外為法(外国為替及び外国貿易法)」に基づく規制、安全保障輸出管理の強化、徹底が求められております。 外為法に基づく輸出管理の制度や実務対応については、ルールの理解、ルールの実践等段階を踏んだ対応を行う必要が...

外為法と他法令との関係性~安全保障輸出管理の全体像を正しく理解することの重要性~

安全保障輸出管理は、単独の法律だけで完結する仕組みではありません。 中小企業や大学・研究機関が輸出管理対応を行う上で重要なのは、「外為法」だけでなく、複数の関連法令がどのように連携して機能しているかを正確に理解することです。そこで本日は、安全保障輸出管理を支える法的な枠組みの概要を、外為法を中心にご紹介します。 外為法は「輸出管理」の根幹をなす法律です 外為法(外国為替及び外国貿易法)は...

クラウド経由でのデータ共有は「技術提供」に該当するか?

近年、クラウドストレージやオンライン共有ツールを使ったデータのやり取りが、企業や大学の現場で日常的に行われています。しかし、このようなデジタル情報の取り扱いにも、外為法に基づく輸出管理が適用されるケースが相当程度存在することをご存知でしょうか。 今回は、クラウド経由での技術・情報共有が「技術の提供」として規制対象になるのかどうかについて、ご説明いたします。 データを「国外に保存・アクセス」...