外為法に基づく輸出許可申請に関して |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

外為法に基づく輸出許可申請に関して

外為法に基づき経済産業大臣の許可を得る必要がある場合、「申請にはどんな書類が必要なのか?」、「どれくらいの時間がかかるのか?」、「どこまで詳細に書く必要があるのか?」など、実務上の様々な疑問を抱える大学・企業のご担当者も多いのではないでしょうか。
今回は、みなし輸出の許可申請の全体像と実務的な対応フローについて、ご紹介いたします。

許可申請が必要となる場合

以下のような場合、みなし輸出として許可申請が必要です。

  • ①外国人研究者(非居住者)にリスト規制技術を含む研究資料を提供
  • ②外国籍のエンジニア(非居住者)にCAD設計データを開示
  • ③外国籍インターン生(非居住者)に技術マニュアルを共有

また、居住者相手でも特定類型に該当する者への技術提供は許可対象とされるため、実務判断のハードルは年々高まっているのが現状です。

申請の基本フロー(技術提供許可の場合)

①該非判定の実施
技術がリスト規制に該当するかどうかを確認。該当する場合には申請が必要。
②キャッチオール規制における需要者確認(エンドユーザー確認)
提供相手の属性・国籍・所属・支配関係等を調査
③用途の取得
技術の使用目的・使用場所・使用期間を確認
④申請準備
「技術提供許可申請書」に必要事項を記載し、関係資料を添付
⑤経済産業省への提出
⑥経済産業省における審査・補正・回答
経済産業省の担当者から補足資料の要求や用途確認の追加質問が来ることもある
⑦問題ない場合には許可
許可後、技術提供の記録保存・管理を徹底する必要がある。

申請書類で必要な主な情報

申請書類においては、以下の情報を具体的に記載する必要があります。

  • ①提供技術に関する詳細な説明
  • ②該当の項番と判定理由
  • ③提供者・提供先の名称・国籍・住所・連絡先等
  • ④技術の使用目的(用途)
  • ⑤提供方法(対面、メール、クラウド等)と期間
  • ⑥再提供の有無

許可取得後も「提供記録の管理」が不可欠です

許可が下りなかった場合には、当然技術提供を行ってはいけません。
他方で、許可が下りた後も、次のような管理の継続が求められます。

  • ①実際の提供日時・提供手段・相手の確認記録
  • ②提供済技術ファイルのログ管理
  • ③許可期間内の技術提供制限(許可外用途での使用禁止の徹底)

これらは後日、経済産業省からのヒアリング・監査があった際に適切に説明を行うために必要な資料となります。

弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

外為法と他法令との関係性~安全保障輸出管理の全体像を正しく理解することの重要性~

安全保障輸出管理は、単独の法律だけで完結する仕組みではありません。 中小企業や大学・研究機関が輸出管理対応を行う上で重要なのは、「外為法」だけでなく、複数の関連法令がどのように連携して機能しているかを正確に理解することです。そこで本日は、安全保障輸出管理を支える法的な枠組みの概要を、外為法を中心にご紹介します。 外為法は「輸出管理」の根幹をなす法律です 外為法(外国為替及び外国貿易法)は...

中小企業・大学に求められる「輸出管理」とは

「外為法は大企業のための制度」、「大学・研究機関や小規模事業者には関係ない」、このような考えは、非常にリスクの高いものと言わざるを得ません。 実際には、中小企業や大学・研究機関でも外為法の規制対象になる技術・製品を扱う場面が急増しています。 そこで今回は、これらの組織に求められる「輸出管理」についてご説明します。法的責任の所在を明確にし、どこから対応を始めるべきかを見極めることが重要です。 ...

外為法における「輸出許可制度」の全体像~リスト規制とキャッチオール規制の基本~

外為法に基づく輸出管理にとは、国家の安全を脅かすおそれのある貨物や技術が、無許可で海外に流出しないようにするための制度であり、日本企業・大学・研究機関を含むすべての「居住者」に適用されます。 本稿では、リスト規制とキャッチオール規制という2つの柱を中心に、輸出許可制度の構造の大枠をご説明いたします。 許可が必要な輸出とは? 輸出許可制度では、「経済産業大臣の許可」が必要となるケースが定め...

貨物別に見る規制品目の具体例と注意点その1~ハイテク製品編~

日本が誇る先端技術や高精度機器は、世界中から注目されており様々な分野で高い需要を誇っていますが、それらの中には軍事転用の可能性があるものも多数存在することから、外為法における規制を正確に把握することが重要です。 特に、ハイテク製品や電子機器、半導体関連技術は、リスト規制の対象となる可能性が高い分野ですので注意が必要です。 規制されやすいハイテク製品の代表例 ハイテク分野では、以下のような...

輸出事後調査とは何か?

近年、外為法に基づく『輸出事後調査』が中小企業を含む事業者に対して実施されるケースが増加しています。税関(又は経済産業省)によって実施されるこの調査は、外為法等の諸法令に基づく許可を取得していたかどうか、また適切な輸出管理体制が取られていたか等を事後的に確認するものであり、企業にとっては対応を間違えると大きなリスクにつながりますので、注意が必要です。 そもそも輸出事後調査とは? 輸出事後調...