第三国を経由した技術提供はどう扱われる?「間接的輸出」と外為法の適用範囲 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

第三国を経由した技術提供はどう扱われる?「間接的輸出」と外為法の適用範囲

グローバル化が進む現在、企業や大学が技術を提供する相手は、日本国内にとどまらず、複数国にまたがる関係者・子会社・共同研究機関に広がっています。中でも注意が必要なのが、「第三国を経由した技術の提供」です。
本稿では、外為法において第三国経由の技術提供がどのように規制されるか、また、企業・研究機関が取るべき対応をご紹介します。

第三国経由の提供が規制対象となる背景

外為法では、「技術提供」や「貨物の輸出」に関して、形式上のルートだけではなく、実質的な移転先という視点も重視します。つまり、形式的なルートに関わらず、最終的に規制対象国や機関へ技術が届く構造であれば、外為法の規制対象になる可能性があります。

  • ①日本企業 → シンガポール子会社 → 中国企業
  • ②日本の大学 → 米国の共同研究者 → 中東の国防機関
  • ③国内拠点からクラウド経由で海外拠点に技術共有 → 第三国スタッフに再提供

このような「間接的輸出」や「再提供」といえるケースも、外為法上の「輸出」とみなされることがあります。

どこまでが「輸出者の責任」か?

外為法上、技術提供の許可要否を判断する責任は、提供を行う主体(日本の企業・大学等)にあります。そのため、たとえ第三国の相手がさらに別の国へ技術を移転する場合でも、日本側がその可能性を知りつつ容認していた場合は違反とみなされるリスクがありますので十分注意が必要です。

海外子会社を経由した技術移転にはご注意ください

ある中小企業が、日本からフィリピンの子会社に対し、高性能センサの製造技術を提供しました。その後、当該子会社が、中国企業と技術協力契約を結んでいたことが判明し、その結果、子会社経由で規制対象国に技術が移転したとされ、日本本社に対して経産省から指導・再発防止命令が発出されるというケースがあります。
グループ内での技術移転であっても、「第三者への再提供」の可能性がある場合は、許可取得または再提供禁止の契約措置が必要であることは改めて注意が必要です。

再提供・迂回提供は『見えにくいリスク』です

第三国経由の提供は、「直接輸出していないから問題ない」と見過ごされがちですが、外為法上では「知っていて提供した」と判断されないための構造が重要です。
そのため、海外子会社や提携大学との取引では、再提供の流れを見通した管理体制の整備が不可欠です。

弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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