技術データの提供も規制対象? 「みなし輸出」管理の重要性
輸出安全管理体制の構築外為法が規制しているのはモノだけではありません。設計図、仕様書、製造プログラム、あるいは技術的な指導といった「技術(プログラムを含む)」の提供も、規制の対象となります。これを「役務取引(技術提供)」の規制と呼びます。
「メールで図面を送っただけ」「海外出張で少しアドバイスをしただけ」――こうした日常的な行為が、実は無許可輸出(無許可技術提供)となり、処罰の対象になる可能性があります。今回は、モノ以上に管理が難しい「技術輸出」のリスクと、近年規制が強化された「みなし輸出」について解説します。
1 技術提供(役務取引)規制とは
外為法第25条では、特定の技術を外国(非居住者)に提供することを規制しています。貨物の場合と同様に、リスト規制に該当する技術(軍事転用可能な高度技術など)であれば、提供先がどこであっても原則として経済産業大臣の許可が必要です。また、リスト規制非該当の技術であっても、キャッチオール規制の要件(用途や需要者の懸念)に該当すれば許可が必要となります。
ここでいう「技術」には、以下のようなものが含まれます。
①ドキュメント類:設計図、回路図、仕様書、マニュアルなど。
②データ・プログラム:CADデータ、製造用ソースコード、シミュレーションデータなど。
③技術指導:会議での発言、電話、メールによる質疑応答、セミナーでの専門的な解説など。
例えば、海外の取引先にメール添付で送った高性能工作機械の操作マニュアルの中に、規制対象となる技術情報が含まれていれば、その送信行為自体が許可申請の対象となります。
2 厳格化された「みなし輸出」管理
従来、外為法の規制対象は「非居住者(外国人や海外法人)」への提供が原則でした。しかし、令和4年5月の法改正施行により、「みなし輸出」管理が明確化・強化されました。
これは、相手がたとえ「居住者(日本人や、日本にある企業の社員)」であっても、その人物が「外国政府や外国法人の支配下にある場合(特定類型)」には、その人物への技術提供を「輸出(非居住者への提供)」とみなして規制する制度です。
企業は、技術情報の提供相手(従業員含む)が、この「特定類型」に該当するかどうかを確認する義務を負うことになりました。入社時やプロジェクト参加時に、誓約書や確認書を取り交わす実務対応が求められています。
3 おわりに:人事・総務部門との連携も必須
技術の輸出管理は、物流部門だけで完結する問題ではありません。海外出張者、研究開発者、そして外国人雇用を管理する人事・総務部門も巻き込んだ全社的な取り組みが必要です。 「うっかりメール」一本で法を犯さないよう、社内の情報セキュリティポリシーと輸出管理規程を連動させることが肝要です。当事務所では、みなし輸出管理に対応した社内規定の改訂や、従業員向けの誓約書ひな形の作成支援も行っております。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
外為法に基づく輸出管理制度の中心的な柱が、「リスト規制」です。 このリスト規制を正確に理解していなければ、該非判定やキャッチオール規制の判断も適切に行うことができません。 そこで、本日はリスト規制の仕組みと、その背後にある考え方を整理します。 リスト規制の概要 リスト規制とは、「特定の性能・仕様を有する物品や技術を、経済産業大臣の許可なく輸出・提供してはならない」と定める制度です。 貨...
前回解説した「リスト規制(1項〜15項)」の判定を行った結果、自社製品がリスト規制に該当しない(非該当)と判断されたとしましょう。では、これで自由に輸出ができるのでしょうか? 答えは「No」です。ここで登場するのが、「キャッチオール規制(補完的輸出規制)」です。 キャッチオール規制とは、リスト規制に該当しない品目(16項品目:食料品や木材などを除くほぼ全ての貨物・技術)であっても、その用途や...
外為法に基づく輸出管理では、「貨物の輸出」、「技術の提供」の行為そのものが規制対象ですが、具体的にどのような場面で許可が必要になるかは、取引の類型によって異なります。また、一定の条件を満たす場合には、「許可不要」となる例外規定も存在します。 本稿では、見落としやすい取引類型と許可要否の判断のポイントを整理し、実務で注意すべき点をご案内します。 「取引の類型」とは何か? 輸出管理の実務では...
仮の相談事例 電子部品メーカーの生産技術課長Aさんは、東南アジアの現地工場(海外子会社)から「製造装置のプログラムに不具合が出た。至急直してほしい」と連絡を受けました。 日本のベテラン技術者が、ZoomやTeams等のWeb会議をつなぎ、画面共有でソースコードを見ながら修正箇所の指示を出し、修正パッチデータも送って復旧させる予定です。Aさんは「同じグループ内だし、モノを輸出するわけでも...
安全保障貿易管理の中核をなすリスト規制とキャッチオール規制は、車の両輪のように機能することで、デュアルユース(軍民両用)の貨物や技術の不適切な流出を防いでいます。 しかし、この二つの規制は、その規制のアプローチと企業に求められる対応において、決定的な相違点があります。 本日は、弁護士の視点から、この二つの規制がそれぞれどのような役割を担い、企業の実務においてどのように区別して対応すべきかを解説...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。