事後調査をきっかけに企業力を高める―危機を乗り越え、信頼へつなげる法務戦略 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

事後調査をきっかけに企業力を高める―危機を乗り越え、信頼へつなげる法務戦略

税関や経済産業省からの「輸出事後調査」を受けた際、多くの企業が「突然の出来事」に戸惑い、不安を抱えます。
しかし、こうした事後調査は、単なるリスクではなく、企業の体制を見直し、信頼性と競争力を高めるチャンスでもあります。
当事務所では、事後調査に直面した企業様に対して、単なる「火消し」ではなく、将来を見据えた企業体制の強化とブランド価値向上を目的としたサポートを提供しています。

事後調査とは「過去の点検」であると同時に、「未来への問い」でもあります

事後調査は、過去に行った輸出・通関手続が適切だったかを検証するプロセスです。
税関や経済産業省が行う調査の目的は、企業を処罰すること自体ではなく、再発防止と制度の信頼性確保にあります。
調査では、次のようなポイントが確認されます。

  • 輸出許可や該非判定の記録の正確性
  • スクリーニング体制の運用状況
  • 輸出管理規程(ICP)や社内ルールの有無
  • 業務担当者の理解度や教育体制
  • 法令違反リスクへの感度と対応状況

このような調査を「一時的なトラブル」と捉えるのではなく、自社の業務や意識を客観的に見直す機会とすることで、企業としての実力を一段階引き上げることができます。

危機対応だけで終わらせない ― 弁護士の支援の活かし方

当事務所では、事後調査への対応を「短期的な問題解決」にとどめず、以下のような”攻めのコンプライアンス支援”につなげる体制構築を重視しています。

①調査対応:信頼を得る「初動」と「説明力」

  • 調査通知を受けた際の事実確認、社内体制の洗い出し
  • 担当者ヒアリング・関係書類の整理
  • 税関・経産省への説明資料の整備、同席支援
  • 法令違反の有無にかかわらず、誠実かつ論理的に対応

調査当日の対応は、企業の姿勢そのものが問われる瞬間です。
弁護士の関与により、組織としての説明責任と危機対応力を適切に示すことができます。

②是正措置:再発防止策の具体化と実行力

  • 指摘事項の分析と業務フローの見直し
  • 輸出管理規程やマニュアルの再設計
  • スクリーニング・該非判定手続の整備
  • 記録保存ルールの確立と管理システムの導入

表面的な形式整備にとどまらず、実際に運用できる仕組みを構築することで、社内の安心感と対応力が飛躍的に向上します。

③教育・社内浸透:人材こそ最大のコンプライアンス資産

  • 管理職・実務担当者向けの実践型研修
  • 新入社員教育やeラーニング活用のアドバイス
  • ケーススタディや行政処分事例に基づくリスク啓発
  • 海外子会社・関連会社への展開支援

「知識の属人化」から「組織としての判断力」へ、法務・輸出担当に限らず、組織全体でリスク感度を共有することが、次なる違反防止の鍵となります。

信頼を取り戻すだけでなく、「競争力」につなげる

事後調査を受けた企業の中には、調査を機に自社の体制を抜本的に見直し、結果として高く評価されるようになった例もあります。

  • 対外的な信頼性が増し、大型取引の入札条件をクリアできた
  • 管理コストを見直すことで業務効率が向上した
  • 経営陣がリスクを共有するようになり、組織の一体感が増した

つまり、事後調査は「マイナスをゼロに戻す作業」ではなく、「ゼロからプラスを創る出発点」にもなり得るのです。

危機を”力”に変える法務戦略をともに

私たちは、企業法務の専門家として、企業の信用と継続的成長を支えるパートナーでありたいと考えています。
「事後調査=終わり」ではなく、「そこから始まる改善と信頼構築のプロセス」をご一緒させていただきます。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

行政処分・刑事罰の可能性とその防衛策~企業と経営者を守るためにできること

輸出事後調査において違反が認定されると、企業は行政処分や刑事罰の対象となることがあります。違反が重大である場合、経営者や担当者個人が責任を問われる可能性もあり、企業にとっては重大な危機となり得ます。 そこで本日は、行政処分・刑事罰の種類や適用事例、そして法的防衛策についてご案内します。 行政処分の種類とその影響 外為法に基づく行政処分には以下のような種類があります。 ①指導・注意(...

クラウド経由での技術提供と輸出管理~リモート時代の見落としやすいリスクとは~

コロナ禍を契機に、リモートワークやクラウド共有が急速に浸透しました。そのため、研究データや技術文書のやりとりをオンラインで行うことは今や当たり前ですが、その一方で、クラウド経由での情報共有が「技術の提供」として外為法の規制対象になるという認識は、未だ十分に広がっていません。 今回は、クラウドやオンラインツールを介したデータの共有が輸出管理においてどのように取り扱われるのか、また、実務でどのような...

安全保障上のリスク~違反事例に学ぶ~

外為法に基づく安全保障輸出管理は、単なる形式的な手続きではなく、国家の安全と企業の存続に直結する重大な制度です。この対応を怠った場合、仮に違反の意図がなかったとしても、重いペナルティを受ける可能性があります。 今回は、実際の違反事例をもとに、企業や大学が直面しうるリスクと損失の大きさ等をご紹介します。 違反が発覚した際の主な法的リスク 外為法に違反した場合、以下のような法的措置が科される...

クラウド経由でのデータ共有は「技術提供」に該当するか?

近年、クラウドストレージやオンライン共有ツールを使ったデータのやり取りが、企業や大学の現場で日常的に行われています。しかし、このようなデジタル情報の取り扱いにも、外為法に基づく輸出管理が適用されるケースが相当程度存在することをご存知でしょうか。 今回は、クラウド経由での技術・情報共有が「技術の提供」として規制対象になるのかどうかについて、ご説明いたします。 データを「国外に保存・アクセス」...

外為法に基づく輸出許可申請に関して

外為法に基づき経済産業大臣の許可を得る必要がある場合、「申請にはどんな書類が必要なのか?」、「どれくらいの時間がかかるのか?」、「どこまで詳細に書く必要があるのか?」など、実務上の様々な疑問を抱える大学・企業のご担当者も多いのではないでしょうか。 今回は、みなし輸出の許可申請の全体像と実務的な対応フローについて、ご紹介いたします。 許可申請が必要となる場合 以下のような場合、みなし輸出と...