調査官との面談・ヒアリング対応~誠実さと事前準備が信頼を築きます~
輸出事後調査対応輸出事後調査では、書面資料の提出に加えて、企業関係者への「面談(ヒアリング)」が行われることが通常です。これは、調査官が書面だけでは把握できない背景事情や社内運用の実態を確認する重要な機会です。同時に、企業としての対応力や誠実性が問われる場でもあります。そこで本日は、面談対応時に企業が注意すべきポイントと、対応経験のある弁護士の関与によるメリットを解説します。
目次
面談の目的と位置づけ
調査官によるヒアリングの目的は、提出資料の内容が実態と整合しているかを確認することにあります。主な確認事項は次のとおりです。
- ①該非判定の実施状況と判断の根拠
- ②エンドユーザーや用途確認の具体的なプロセス
- ③社内規程の運用実態と教育の実施状況
- ④担当者の認識や判断過程
企業側の対応次第では、調査の方向性が大きく変わることもあるため、準備が極めて重要です。
面談の準備で押さえるべきポイント
面談に臨む前には、以下の準備を必ず行いましょう。
①対象となる輸出取引の事実関係整理
事前に関係書類を時系列で整理し、担当者から詳細な聞き取りを行っておきます。面談中に説明が二転三転するようでは、企業の信頼性に傷がつきます。
②担当者へのレクチャー
調査官が質問しやすいポイントを想定し、事前に関係者には、必ず事実に即した説明を行うよう指導し、推測や憶測での回答は避けるよう周知徹底しましょう。虚偽の説明をすることは絶対に行ってはいけません。
③弁護士の同席を検討
面談は「形式的な確認」ではなく、企業の責任を問われる場面にもつながり得ます。
弁護士が同席することで、質問の意図を的確に捉え、必要に応じて説明内容を補足・整理できる体制が整います。また、不用意に専門用語を利用することで思わぬ方向に話が進むこともあるため、注意が必要です。
面談中の注意点
以下のような行動は、調査官に不信感を与えるおそれがあります。
- ①回答を渋る、誤魔化す、質問をはぐらかす
- ②必要以上に防衛的な態度を取る
- ③実態と異なる理想論のみを述べる
特に、規程が整っていても「運用されていなかった」場合など、整合性を欠く説明は逆効果となるため、事実に即した誠実な説明を心がけましょう。
面談後の対応も重要
面談が終わったら、以下の対応も忘れずに行ってください。
- ①面談内容の記録作成(議事録・要点メモ等)
- ②追加質問が出た場合の管理と資料準備
- ③社内共有と今後の対応方針の確認
面談後に調査官から求められる追加提出資料についても、漏れなく・正確に対応することが信頼構築につながります。
ヒアリング対応は、単なる確認作業ではなく、企業のリスク管理体制や誠実性をアピールできる場でもあります。「誤魔化す」よりも「認めて是正する」という姿勢こそが、税関(経済産業省)からの信頼を得る鍵となります。
当事務所では、ヒアリングの事前準備から同席、面談後のフォローまでを一貫してご支援しております。輸出事後調査に不安を感じられる際は、ぜひご相談ください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
AI、量子、クラウド、バイオ、半導体等の「先端技術分野」における研究・開発活動は、日々安全保障上の重要性が高まっており、国際的にも輸出管理の重点対象とされております。 一方で、技術の形式が「データ」、「アルゴリズム」、「クラウド上のアクセス権」といった目に見えにくい形態に変化しているため、従来の制度や確認体制ではカバーしきれないグレーゾーンも増えています。 今回は、AIやクラウド等の先端分野に...
輸出事後調査において、税関(経済産業省)が特に重視するのが「法令違反の有無」です。その判断基準となるのが、外為法や関連する政省令に基づく輸出管理規制です。企業としては、そもそもどのような行為が違反となりうるのかを理解しておくことが、リスク管理の第一歩となります。 外為法に基づく輸出管理の基礎知識 日本の輸出管理制度は「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づき構築されています。主なポイント...
再調査・再発防止計画のフォローアップ~改善の継続こそ信頼醸成につながります~
輸出事後調査対応輸出事後調査の対応が一段落しても、企業としての義務が終わるわけではありません。 違反が認定された場合、当局から「再発防止計画」の提出や、その後の実施状況に関するフォローアップが求められることがあります。また、改善が不十分と判断されれば「再調査」が実施されることもあります。本稿では、再調査やフォローアップ対応の重要性と、企業が取るべき実効的措置についてご案内します。 再調査が行われるケースと...
近年、外為法に基づく『輸出事後調査』が中小企業を含む事業者に対して実施されるケースが増加しています。税関(又は経済産業省)によって実施されるこの調査は、外為法等の諸法令に基づく許可を取得していたかどうか、また適切な輸出管理体制が取られていたか等を事後的に確認するものであり、企業にとっては対応を間違えると大きなリスクにつながりますので、注意が必要です。 そもそも輸出事後調査とは? 輸出事後調...
外為法に基づく輸出管理を適切に行うためには、単発の判断や担当者の経験則に頼るのではなく、組織としての内部統制システムを整備することが不可欠です。 経済産業省も「輸出管理内部規程」の整備を推奨しており、企業規模を問わず実効性のある体制を持つことが求められています。 本日は、輸出管理における内部統制の要素と、企業が実務上整備すべき具体的なポイントをご紹介します。 内部統制の目的 まず、...
東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。