社内教育・研修の重要性と実践方法 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

社内教育・研修の重要性と実践方法

輸出管理の体制を整備しても、それが現場で正しく運用されていなければ、実効性はゼロです。とりわけ外為法における該非判定やみなし輸出の判断は、第一には現場の担当者が日々の業務の中で適切に対応できるかどうかにかかっています。
今回は、輸出管理における社内教育・研修の重要性と、実務に即した研修プログラムの設計方法をご紹介いたします。

なぜ社内教育が重要なのか?

外為法違反の多くは、「制度を知らなかった」、「確認すべきだと思わなかった」といった認識不足によるヒューマンエラーが原因です。
例えば、

  • ①技術者が該非判定をせずに図面をクラウド共有
  • ②研究者が外国人に技術情報を提供し、みなし輸出に該当
  • ③営業担当が需要者・用途の確認をせずに見積提出

これらは、「制度自体の整備はされていたが、現場に知識がなかったために発生した違反」であるといえるでしょう。

誰に教育を実施すべきなのか?

輸出管理は一部の法務・輸出担当者だけの問題ではありません。
以下のような関係者すべてが対象となります。

①経営層
コンプライアンス経営の責任者としての理解が必要
②技術・研究部門
該非判定、みなし輸出の判断が求められるため
③営業・海外取引担当
需要者確認・用途確認のため
④総務・人事
外国人採用・研究者受入れ時の初動対応が重要
⑤輸出管理責任者・実務担当
最新制度の把握と全体統括

教育内容の設計:職種別・リスク別で差をつける

教育は、職種や役割ごとにアレンジすることで、実効性が大きく高まります。
例えば、

(1)共通基礎研修(全職員対象)

  • ①外為法の概要(目的・構成・罰則)
  • ②輸出管理における「該非判定」と「技術提供」の意味
  • ③違反事例と自社で起こり得るリスク

(2)実務研修(部門別)

  • ①技術者向け:リスト規制と該非判定の進め方、みなし輸出対応
  • ②営業向け:用途・需要者確認、顧客調査のポイント
  • ③研究者向け:外国人との共同研究時の留意点
  • ④輸出担当向け:許可申請・記録保存・制度改正情報

教育の実施方法と頻度

(1)実施方法

  • ①年1回以上の定期集合研修(対面・オンライン)
  • ②eラーニングによる自主学習型教育
  • ③新任者研修・昇進時のフォローアップ研修
  • ④部署単位の勉強会・ケーススタディ研修

(2)教育記録の保存

  • ①受講記録(日時、対象者、内容)を文書化・保存
  • ②理解度確認テストの実施も推奨(確認と証跡の両立)

輸出管理における社内教育は、現場の判断力と気づきを養う”最後の砦”です。体制を整え、制度を設けても、それを使いこなす人が育たなければ意味がありません。
違反の多くは”意図的”ではなく”無意識”で起きます。だからこそ、継続的な教育が違反を防ぐ最大の手段となるのです。

弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

調査官との面談・ヒアリング対応~誠実さと事前準備が信頼を築きます~

輸出事後調査では、書面資料の提出に加えて、企業関係者への「面談(ヒアリング)」が行われることが通常です。これは、調査官が書面だけでは把握できない背景事情や社内運用の実態を確認する重要な機会です。同時に、企業としての対応力や誠実性が問われる場でもあります。そこで本日は、面談対応時に企業が注意すべきポイントと、対応経験のある弁護士の関与によるメリットを解説します。 面談の目的と位置づけ 調査官...

キャッチオール規制と企業の実務対応 ― 「疑わしいときは止まる」の原則

外為法による輸出管理の中でも、企業にとって最も実務上の負担が大きいのが「キャッチオール規制」です。 これは、リスト規制品目に該当しない製品であっても、輸出先や最終用途によっては規制対象となる制度です。平たく言えば「品目に載っていなくても危険性が存在するなら止める」という考え方であり、企業は常にエンドユーザーや用途の確認を怠らない体制を構築する必要があります。 本日は、キャッチオール規制の仕...

外国人研究者への技術提供は「みなし輸出」に該当するか?大学・研究機関の実務対応

近年、大学や研究機関における国際的な共同研究・留学生の受入れは当たり前であり、多くの研究現場では外国人研究者と先端技術を共有する機会が増えています。しかし、このような行為が外為法上の「みなし輸出」に該当する可能性があることは、意外と認識されていない、又は認識はされていても重要視されていないのが実情です。 元々の「みなし輸出」の適用対象になる行為とは? 前回も触れたように、元々の「みなし輸出...

「技術」の提供規制:非居住者への情報提供、指示、指導の具体例

リスト規制の対象は「貨物」だけでなく、その設計、製造、使用に必要な「技術」も含まれます。現代の企業活動において、国境を越えたデータのやり取りや、国内にいる外国人従業員への技術指導は日常的です。 しかし、これらの行為が外為法上の「技術の提供」とみなされ、無許可で実施されると、深刻な法令違反となるリスクがあります。 そこで本日は、弁護士の視点から、規制対象となる「技術の提供」が具体的にどのような行...

クラウド・AI・先端技術研究と輸出管理

AI、量子、クラウド、バイオ、半導体等の「先端技術分野」における研究・開発活動は、日々安全保障上の重要性が高まっており、国際的にも輸出管理の重点対象とされております。 一方で、技術の形式が「データ」、「アルゴリズム」、「クラウド上のアクセス権」といった目に見えにくい形態に変化しているため、従来の制度や確認体制ではカバーしきれないグレーゾーンも増えています。 今回は、AIやクラウド等の先端分野に...