外為法と他法令との関係性~安全保障輸出管理の全体像を正しく理解することの重要性~
輸出安全管理体制の構築安全保障輸出管理は、単独の法律だけで完結する仕組みではありません。
中小企業や大学・研究機関が輸出管理対応を行う上で重要なのは、「外為法」だけでなく、複数の関連法令がどのように連携して機能しているかを正確に理解することです。そこで本日は、安全保障輸出管理を支える法的な枠組みの概要を、外為法を中心にご紹介します。
外為法は「輸出管理」の根幹をなす法律です
外為法(外国為替及び外国貿易法)は、日本における輸出管理制度の中心的な法律であり、主に次の2つの側面から規制を行っています。
- ①貨物の輸出(物理的な物の移動)
- ②技術の提供(データ・ノウハウ等の提供、みなし輸出含む)
これらはいずれも「国家の安全の維持」を目的とした規制であり、経済産業省が主たる所管官庁となります。とくに、国際的な枠組みに基づく「リスト規制」や、用途・需要者をチェックする「キャッチオール規制」が重要な規制の柱です。
関税法との違いと連携
「貨物の輸出」という観点では、関税法も重要な関連法令となります。関税法では、主に輸出手続における通関・申告制度や、密輸防止のための措置が定められています。
- ①関税法:物理的なモノの輸出を主として税関で管理
- ②外為法:安全保障上の観点から許可・判定を管理
たとえば、輸出申告時に必要な「該非判定書」の添付や、輸出許可番号の記載は、外為法上の規制を前提として関税法上の手続きに反映されているものであり、両者は密接に連動していると言えるでしょう。
現場対応では「複数の法令の理解」がカギです
たとえば、ある大学が外国籍の研究員と共同研究を行う場合、その研究対象が外為法上の技術に該当すれば、規制対象に該当し得るとともに、場合によっては、入管法や個人情報保護法、不正競争防止法等の他法令にも注意が必要です。
また、製造業が先端部品を輸出する場合には、関税法上の手続きと外為法上の該非判定の両方を意識する必要があるなど、単独の法律にとどまらない複眼的な視点が求められます。
弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
該非判定書の作成方法と保存義務 ― 形式に加えて『実質』も問われる
輸出安全管理体制の構築外為法に基づく輸出管理では、貨物や技術がリスト規制に「該当」または「非該当」かを判断するために行う「該非判定」が全ての出発点です。そして、その判断の記録として作成する必要があるのが「該非判定書」です。 該非判定書は、税関やからの照会や経済産業省による立入検査等の際に提出を求められることもあり、自社における輸出管理の信頼性を裏付ける重要資料です。 今回は、実務で使える該非判定書の作成方法と保存義...
事後調査をきっかけに企業力を高める―危機を乗り越え、信頼へつなげる法務戦略
輸出事後調査対応税関や経済産業省からの「輸出事後調査」を受けた際、多くの企業が「突然の出来事」に戸惑い、不安を抱えます。 しかし、こうした事後調査は、単なるリスクではなく、企業の体制を見直し、信頼性と競争力を高めるチャンスでもあります。 当事務所では、事後調査に直面した企業様に対して、単なる「火消し」ではなく、将来を見据えた企業体制の強化とブランド価値向上を目的としたサポートを提供しています。 事後調査...
行政処分・刑事罰の可能性とその防衛策~企業と経営者を守るためにできること
輸出事後調査対応輸出事後調査において違反が認定されると、企業は行政処分や刑事罰の対象となることがあります。違反が重大である場合、経営者や担当者個人が責任を問われる可能性もあり、企業にとっては重大な危機となり得ます。 そこで本日は、行政処分・刑事罰の種類や適用事例、そして法的防衛策についてご案内します。 行政処分の種類とその影響 外為法に基づく行政処分には以下のような種類があります。 ①指導・注意(...
外為法の輸出管理というと「モノ(製品)」の輸出のみを思い浮かべる方が多いかもしれません。 しかし、実際には技術情報やデータの提供も規制対象に含まれます。 特に近年では、AI、半導体設計、量子技術などの分野で、技術データの取扱いが企業・大学双方にとって大きなリスクとなっています。 「技術の提供」とは何か 外為法において、「技術の提供」も輸出と同様に規制対象として扱われています。 これは、...
近年、外為法に基づく『輸出事後調査』が中小企業を含む事業者に対して実施されるケースが増加しています。税関(又は経済産業省)によって実施されるこの調査は、外為法等の諸法令に基づく許可を取得していたかどうか、また適切な輸出管理体制が取られていたか等を事後的に確認するものであり、企業にとっては対応を間違えると大きなリスクにつながりますので、注意が必要です。 そもそも輸出事後調査とは? 輸出事後調...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。