外為法の安全輸出管理の総論ー第2回ー
輸出安全管理体制の構築本日は、外為法の安全輸出管理の総論の第2回をご紹介いたします。
1 リスト規制とは何か
安全保障輸出管理の基本となる規制の一つが、リスト規制です。リスト規制とは、輸出貿易管理令別表第1の1から15の項に掲げられた貨物や、外国為替令別表の1から15の項に掲げられた技術に該当する場合、原則として経済産業大臣の許可が必要となる制度です。
リスト規制の対象は、武器そのものに限られません。大量破壊兵器等や通常兵器の開発等に用いられるおそれが高い民生品も含まれます。例えば、一定性能以上の工作機械、測定装置、電子部品、通信機器、炭素繊維、化学品、材料加工装置などが問題になり得ます。
リスト規制の判断では、単に製品名だけを見るのでは不十分です。規制該当性は、性能、仕様、材質、精度、用途、構造、ソフトウェアの機能などによって判断されます。そのため、営業担当者が「普通の製品です」と判断するだけでは足りず、技術部門やメーカーから該非判定書を取得するなど、客観的な資料に基づく確認が必要です。
【図表3 リスト規制の基本確認表】
| 確認項目 | 確認内容 | 主な資料 |
| 貨物又は技術の特定 | 何を輸出又は提供するのか | 製品仕様書、図面、型番、技術資料 |
| 規制リストとの照合 | 輸出令別表第1又は外為令別表に該当するか | 貨物等省令、通達、該非判定書 |
| 仕向地の確認 | どの国又は地域に向けるのか | 契約書、注文書、インボイス、輸送書類 |
| 提供先の確認 | 誰に提供するのか | 取引先情報、需要者情報、組織図 |
| 許可例外の確認 | 例外規定を適用できるか | 法令、通達、社内判断記録 |
| 許可申請の要否 | 経済産業大臣の許可が必要か | 社内審査記録、申請書類 |
2 キャッチオール規制とは何か
リスト規制に該当しなければ常に許可不要、というわけではありません。ここで重要になるのが、キャッチオール規制です。
キャッチオール規制とは、リスト規制に該当しない貨物や技術であっても、大量破壊兵器等や通常兵器の開発等に用いられるおそれがある場合に、経済産業大臣の許可を必要とする制度です。リスト規制が「品目」に着目する規制であるのに対し、キャッチオール規制は、「用途」や「需要者」に着目する補完的な規制といえます。
特に注意すべきなのは、キャッチオール規制は、必ずしも高度な軍事技術を扱う企業だけの問題ではないという点です。リスト規制に該当しない一般的な製品や技術であっても、仕向地、最終用途、最終需要者に懸念がある場合には許可が必要になることがあります。近時はキャッチオール規制に関する改正もあり、これまで輸出管理にあまり馴染みのなかった事業者でも確認すべき事項が増えています。
キャッチオール規制では、大きく分けて「大量破壊兵器等キャッチオール規制」と「通常兵器キャッチオール規制」が問題になります。大量破壊兵器等キャッチオール規制では、輸出や技術提供の相手方、用途、需要者が、大量破壊兵器等の開発等に関係するおそれがないかを確認します。通常兵器キャッチオール規制では、通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがないかを確認します。
【図表4 リスト規制とキャッチオール規制の違い】
| 規制の種類 | 着目点 | 典型的な確認事項 | ポイント |
| リスト規制 | 貨物又は技術の性能・仕様 | 輸出令別表第1、外為令別表、貨物等省令への該当性 | 該当すれば原則として許可が必要 |
| キャッチオール規制 | 用途・需要者・仕向地 | 大量破壊兵器等や通常兵器の開発等に使われるおそれ | リスト非該当でも許可が必要になる場合がある |
| インフォーム制度 | 経済産業大臣からの通知 | 許可申請をすべき旨の通知の有無 | 通知を受けた場合は許可要否の検討が必須 |
3 該非判定とは何か
企業が最初に押さえるべき実務が、該非判定です。該非判定とは、輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、輸出令別表第1や外為令別表などの規制リストに該当するかどうかを判定する作業です。
該非判定は、営業担当者の感覚や製品名だけで行うものではありません。例えば、同じカテゴリーの製品であっても、性能値、精度、使用可能温度、制御軸数、材料、暗号機能、ソフトウェアの機能などによって結論が変わることがあります。そのため、製品メーカー、技術部門、法務部門、輸出管理部門が連携し、必要に応じて該非判定書を作成又は取得することが重要です。
該非判定の結果は、後日、税関や経済産業省から説明を求められた場合の重要な証拠にもなります。単に「非該当と判断した」と結論だけを残すのではなく、どの資料を見て、どの規定と照合し、誰が、いつ、どのように判断したのかを記録しておくことが望ましいです。
4 取引審査とは何か
該非判定と並んで重要なのが、取引審査です。取引審査とは、輸出しようとする貨物や提供しようとする技術について、最終用途、最終需要者、仕向地、取引経路などに懸念がないかを確認する手続です。
例えば、次のような事情がある場合には、慎重な確認が必要です。
【図表5 取引審査で注意すべき兆候】
| 確認事項 | 注意すべき例 |
| 用途 | 用途説明が曖昧、通常の用途と異なる、大量破壊兵器等や軍事用途との関連が疑われる |
| 需要者 | 最終需要者が不明、取引先が開示を拒む、外国ユーザーリスト掲載者との関係が疑われる |
| 仕向地 | 懸念国・地域への輸出、再輸出の可能性がある |
| 取引経路 | 不自然な商流、迂回輸出が疑われる、第三国経由で最終需要者が不明 |
| 取引条件 | 通常と異なる大量発注、用途に比して過剰な性能要求、不自然な支払条件 |
| 技術提供 | 参加者、アクセス権限、共有範囲が不明確な共同開発やクラウド共有 |
取引審査では、契約書、注文書、仕様書、エンドユーザー証明書、用途説明書、相手方のウェブサイト、公開情報、外国ユーザーリストなどを確認します。特に、キャッチオール規制では用途要件や需要者要件が問題となるため、「誰が、何のために使うのか」を確認する姿勢が不可欠ですLegalOnナレッジ。
5 みなし輸出管理とは何か
技術提供規制の中で、企業が特に誤解しやすいのが、みなし輸出管理です。みなし輸出管理とは、日本国内で行われる技術提供であっても、居住者から非居住者に対して規制技術を提供する場合には、外国への技術提供と同様に管理対象とする考え方です。
ここで重要なのは、判断基準が国籍だけではないという点です。外国人であっても、日本国内の事務所に勤務する者や、日本に入国後6か月以上経過した者は、居住者として扱われる場合があります。一方、日本人であっても、外国の事務所に勤務する目的で出国して外国に滞在する者などは、非居住者として扱われる場合があります。
また、令和4年5月1日以降、非居住者から強い影響を受けている一定の居住者、いわゆる特定類型に該当する者への技術提供についても、規制対象となり得ることが明確化されています。特定類型には、外国政府や外国法人等との契約により指揮命令を受ける者、外国政府等から多額の金銭その他の重大な利益を得ている者、本邦における行動に関し外国政府等の指示又は依頼を受ける者などが含まれます。
【図表6 みなし輸出管理の基本イメージ】
| 場面 | 規制対象となり得る理由 |
| 日本国内で非居住者に規制技術を説明する | 国内であっても、非居住者への技術提供となり得る |
| 外国人技術者に製造ノウハウを研修する | 国籍ではなく居住者・非居住者の判定が必要 |
| 日本人海外駐在員に技術情報を送る | 日本人でも非居住者に該当する場合がある |
| 特定類型に該当する居住者に規制技術を提供する | 非居住者への提供と事実上同一とみなされる場合がある |
企業では、人事部門、研究開発部門、法務部門、輸出管理部門の連携が重要になります。研究者、技術者、インターン、出向者、共同研究先、海外子会社の社員など、技術にアクセスする人の属性を適切に確認する必要があります。
以上、本日は外為法の安全輸出管理の総論の第2回をご説明いたしました。次回は第3回を予定しております。
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東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。