外為法上の「用途」:汎用品の軍事転用リスクの考え方 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

外為法上の「用途」:汎用品の軍事転用リスクの考え方

外為法に基づく安全保障貿易管理において、「用途」という概念は、リスト規制とキャッチオール規制の双方で非常に重要な意味を持ちますが、その解釈と役割は異なります。
特に、汎用品が兵器開発に転用されるリスク、すなわち「デュアルユース」のリスクを判断する上で、「用途」の理解は不可欠です。
本日は、弁護士の視点から、外為法上の「用途」の考え方を整理し、リスト規制における用途の考慮の仕方と、キャッチオール規制で「用途」がいかに決定的な役割を果たすかを解説します。 

外為法における「用途」の二つの側面

外為法上の規制は、大きく「モノの性能」と「取引の目的」の二軸で成り立っています。「用途」は主に「取引の目的」を評価するために用いられます。

(1)リスト規制における「用途」:性能が最優先

リスト規制は、貨物や技術の客観的な性能が基準です。
原則として、その製品がリストに該当する性能を持っていれば、たとえ輸出者が「平和的な民生用途」であることを知っていたとしても、輸出許可が必要となります。 

(2)キャッチオール規制における「用途」:規制の分水嶺

キャッチオール規制は、リスト規制の対象外である汎用品が、大量破壊兵器等の開発・製造に用いられるおそれがある場合に適用されます。
ここでは、「用途」と「需要者」が、規制が適用されるか否かを決定する最も重要な要素となります。

 汎用品の軍事転用リスク(デュアルユース)の考え方

安全保障貿易管理の難しさは、多くの製品が軍事と民生の両方に使用可能であるデュアルユースの性質を持っている点にあります。

(1)「懸念される用途」とは

外為法が懸念する「用途」とは、主に以下の兵器開発等に関連するものです。
①大量破壊兵器:核兵器、生物・化学兵器、およびそれらの運搬手段であるミサイルの開発、製造、貯蔵など。
②通常兵器:戦車、戦闘機、艦船などの通常兵器の開発、製造、使用など。

企業は、自社の汎用品が、輸出先の最終的な用途において、上記のような兵器開発プロジェクトに組み込まれる可能性がないかを判断しなければなりません。

(2)不自然な取引の兆候

用途の真偽を判断する際、弁護士は以下の不自然な兆候がないかを注意深く審査するよう助言します。

①用途と製品の不一致:輸出先の事業内容(例:食品加工会社)と、注文された高性能機器(例:高精度な計測機器)の用途が不自然にミスマッチしている場合
②不自然な納品ルート:最終的な設置場所と異なる第三国を経由して納品を要求される、転売が疑われる場合
③技術情報の過度な要求:注文した製品の性能や技術仕様について、民生用途では通常必要とされない過度に詳細な情報を要求される場合
④支払い条件の不透明さ:現金による支払いを強く求められる、あるいは第三者からの支払いが不自然な場合 

実務上の「用途確認」の徹底

キャッチオール規制への実効性のある対応として、企業は顧客管理の一環として、以下の方法で「用途」の確認をする必要があります。

①最終用途証明書の取得:輸出先企業から、最終的な用途と需要者を明記した証明書を提出させます。
②デューデリジェンスの実施:企業のウェブサイト、所在地、事業実績などを調査し、用途証明書の記載内容が信用できるかを裏付けます。
③審査会議での検討:不自然な兆候が見られた場合は、輸出管理部門だけでなく、法務や技術部門の担当者も交えた取引審査会議で、軍事転用の可能性がないかを議論します。 

外為法上の「用途」の概念は、単なるビジネス上の目的を超え、国際的な安全保障という公益に関わる重大な判断基準であることを認識すべきです。

弊事務所では、外為法に関する一般的なご相談にとどまらず、輸出管理の体制構築や外部監査等を幅広く取り扱っております。
少しでもご不安な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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