海外子会社・研究機関との共同研究における該非判定
輸出安全管理体制の構築グローバル化が進む中で、企業や大学が海外拠点・研究機関と共同で研究開発を行うことは一般的になりました。
しかし、この「共同研究」こそが、外為法の輸出管理における最も見落とされやすいリスク領域です。
本日は、共同研究における該非判定の考え方と、法務・研究現場が連携して取るべき実務対応を解説します。
共同研究における「輸出」の概念
外為法上の「輸出」には、モノの移転だけでなく技術情報の提供も含まれます。
したがって、海外子会社や外国の研究機関と研究データや設計情報を共有する行為は、技術の提供に該当する可能性があります。
特に次のような行為が典型です。
①海外研究チームにCADデータや実験条件を送付する
②外国人研究員に試作品の構造・工程を説明する
③クラウドサーバー上で共同解析を行う(サーバー所在地が海外)
④共同研究契約に基づき成果データを国外へ移転する
つまり、「共同研究=輸出リスクを内包している」と考えることが重要です。
海外子会社との技術共有における注意点
企業グループ内であっても、国内法人から海外子会社への技術提供は輸出に該当します。
特に親会社が日本にあり、海外生産拠点へ設計データやノウハウを送る場合は、リスト規制・キャッチオール規制の対象になる可能性があります。
この際の留意点は次のとおりです。
①同一グループ内でも「法人格が異なれば輸出」とみなされる
②海外子会社が第三国へ再輸出する場合、日本企業に「連帯的責任」が問われ得る
③グループ契約書に「再輸出禁止」「輸出許可取得義務」条項を盛り込むことが重要
グループ内の情報共有だからといって、輸出管理を免れることはできません。むしろ、海外子会社を通じた再移転が最も見えにくいリスクを生むため、要注意です。
大学・研究機関の共同研究での判断
大学や研究機関では、海外の大学・研究所・企業と連携するケースが増えています。
この場合、共同研究契約に基づく技術情報の共有や研究成果の開示が、技術輸出に該当する可能性があります。
特に、次のような条件がそろう場合には注意が必要です。
①研究テーマがAI、量子、宇宙、バイオ、防衛関連分野である
②共同研究相手が懸念国に所在、または軍需研究機関に関連している
③外国人研究者が日本国内の研究設備にアクセス可能
研究者の善意や学術目的にかかわらず、提供内容がリスト該当技術であれば外為法上の輸出とみなされます。
弁護士としての視点 ― 契約と体制の「二重の防御」
弁護士の立場から見ると、共同研究における最大のリスクは「技術情報の範囲が曖昧なまま共有されること」です。
契約書と管理体制の両輪で、以下のような仕組みを構築することが重要です。
①契約面での対策
共同研究契約書に次の条項を明記する:
「本研究に関連して提供される技術情報について、外為法その他の輸出管理法令を遵守するものとし、再提供には事前の書面承諾を要する。」
「提供技術がリスト規制対象である場合、相手方は当該技術を経産大臣の許可なしに第三者へ開示しないものとする。」
②体制面での対策
研究代表者・技術部門・法務部門による事前該非確認フローを構築し、学外持出・データ転送時に承認を義務付ける。
共同研究の初期段階から法務が関与し、技術内容を理解したうえで契約条項を整備することが、実効的なコンプライアンスの鍵となります。
弊事務所では、外為法に関する一般的なご相談にとどまらず、輸出管理の体制構築や外部監査等を幅広く取り扱っております。
少しでもご不安な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。