経営層の責任とガバナンス強化~輸出管理はトップの意識が重要です~
輸出安全管理体制の構築輸出管理というと「技術部門や実務担当の仕事」と捉えられがちですが、組織の最終的な責任は経営層にあります。実際に外為法違反が発覚した場合、処分対象となるのは企業・法人としての組織であり、その法的責任は経営者に及ぶという点は改めて留意する必要があるでしょう。
経営者は「知らなかった」では済まされません
外為法では、企業が行う輸出・技術提供について、法人全体の責任が問われる構造になっています。違反の程度によっては、
- ①企業としての輸出禁止処分
- ②事業免許の取り消し
- ③社会的信用の喪失(報道、取引停止)
など、企業の存続に関わるレベルの甚大なリスクが発生します。
経営層が果たすべき様々な役割
輸出管理体制の構築・維持において、経営層が果たすべき代表的な役割は次のとおりです。
- ①基本方針の策定と社内への発信
- 「当社は輸出管理を重視し、法令遵守を徹底する」という姿勢を明確にすることで、組織全体の意識を統一できます。
- ②責任体制の整備と人員配置
- 輸出管理責任者を任命し、必要な予算・人材・教育リソースを確保することが求められます。
- ③ガバナンスの実行(報告・監督)
- 実務状況の定期報告を受け、監査・改善のサイクルを主導する役割を担います。
- ④緊急時の対応指揮
- 違反発覚や行政対応が発生した際には、迅速かつ誠実に対応を主導する必要があります。
- ⑤取引先・社会への説明責任の遂行
- 取引先、ひいては社会全体に対して、適正な管理体制を持つ企業であることを発信する役割も、経営層の責任です。
実務的な施策の例
経営層として実施すべき具体的な施策には、例えば以下のようなものが考えられるところです。
- ①輸出管理基本方針書の社内発表(イントラ掲載・対外公表)
- ②経営会議での年次輸出管理報告の実施
- ③外部専門家・顧問弁護士の活用による定期的な監査、レビューの実施
- ④重大違反の内部通報制度の整備
- ⑤グループ会社・海外拠点へのガバナンス拡張(親会社の統制)
外為法違反は、一担当者の過失ではなく、組織全体の統治責任と捉えられます。だからこそ、輸出管理を単なる法令対応にとどめず、経営戦略の一部として位置づけることが、持続可能なガバナンスのカギです。
弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
キャッチオール規制の実務では、「誰が」「何の目的で」輸出品を使用するかを確認することが最も重要です。 これを怠ると、外為法違反となるおそれがあります。 本稿では、需要者・用途の確認手順と、その際に直面する現場の課題を整理します。 確認の目的と法的根拠 キャッチオール規制では、輸出者は「用途確認(for what purpose)」と「需要者確認(to whom)」を自らの責任で行わな...
輸出管理において、「技術や製品が何であるのか(該非判定)」と同じくらい重要なのが、「誰に」「何の目的で」提供するのかの確認です(いわゆる取引審査)。 これは外為法上、キャッチオール規制(用途・需要者規制)を踏まえた審査であり、リスト規制に該当しない物でも、許可が必要となる場合があります。 今回は、需要者・用途確認の具体的な実務方法と、チェックリストやテンプレートを活用した管理手法をご案内いたし...
再調査・再発防止計画のフォローアップ~改善の継続こそ信頼醸成につながります~
輸出事後調査対応輸出事後調査の対応が一段落しても、企業としての義務が終わるわけではありません。 違反が認定された場合、当局から「再発防止計画」の提出や、その後の実施状況に関するフォローアップが求められることがあります。また、改善が不十分と判断されれば「再調査」が実施されることもあります。本稿では、再調査やフォローアップ対応の重要性と、企業が取るべき実効的措置についてご案内します。 再調査が行われるケースと...
事後調査をきっかけに企業力を高める―危機を乗り越え、信頼へつなげる法務戦略
輸出事後調査対応税関や経済産業省からの「輸出事後調査」を受けた際、多くの企業が「突然の出来事」に戸惑い、不安を抱えます。 しかし、こうした事後調査は、単なるリスクではなく、企業の体制を見直し、信頼性と競争力を高めるチャンスでもあります。 当事務所では、事後調査に直面した企業様に対して、単なる「火消し」ではなく、将来を見据えた企業体制の強化とブランド価値向上を目的としたサポートを提供しています。 事後調査...
外為法に基づく安全保障輸出管理は、単なる形式的な手続きではなく、国家の安全と企業の存続に直結する重大な制度です。この対応を怠った場合、仮に違反の意図がなかったとしても、重いペナルティを受ける可能性があります。 今回は、実際の違反事例をもとに、企業や大学が直面しうるリスクと損失の大きさ等をご紹介します。 違反が発覚した際の主な法的リスク 外為法に違反した場合、以下のような法的措置が科される...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。