各取引類型における許可対象行為と例外規定 |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

各取引類型における許可対象行為と例外規定

外為法に基づく輸出管理では、「貨物の輸出」、「技術の提供」の行為そのものが規制対象ですが、具体的にどのような場面で許可が必要になるかは、取引の類型によって異なります。また、一定の条件を満たす場合には、「許可不要」となる例外規定も存在します。
本稿では、見落としやすい取引類型と許可要否の判断のポイントを整理し、実務で注意すべき点をご案内します。

「取引の類型」とは何か?

輸出管理の実務では、単に「貨物を送る」、「技術を教える」という分類では事案の把握として不十分となる場合が多いです。
行為の内容・手段・相手先なども踏まえることが必要であり、例えば、以下のケースでは、それぞれ判断のポイントが変わってきます。

  • ①通常の貨物輸出(物品の国外持出)
  • ②第三国への再輸出を伴う取引
  • ③クラウド共有・Web会議などによる技術提供
  • ④外国人研究者に対する研究指導(みなし輸出等)
  • ⑤海外子会社・関連会社への社内技術移転

これらはすべて、内容次第で外為法の許可対象となる可能性があるため、画一的な判断は禁物です。

「例外規定」が適用される場合とは?

外為法では、一定の条件を満たす取引については、許可が不要となる例外規定が定められています。代表的なものとしては以下の通りです。

①ホワイト国(グループA)への輸出

特定の信頼性が高い国(現在のグループA)への輸出は、キャッチオール規制関連の審査が不要となる場合があります。ただし、リスト規制品目に該当すれば例外なく許可が必要です。

②学会発表・論文掲載などの「公開情報」

技術が既に一般に公開されている情報である場合(例:学会で発表済、論文に掲載済)には、原則として「技術提供」に当たりません。ただし、提供の方法や時期によっては例外が認められないこともあるため、個別判断が重要です。

③人道目的の医療・災害対応物資

一定の人道支援物資や災害対応物資については、特例措置が設けられていることがあります。

実務では「判断の記録」が不可欠です

例外規定に該当すると判断した場合でも、必ずその判断過程を記録し、証拠として保存しておくことが重要です。経済産業省から照会を受けた際、理由を説明できなければ、形式上の違反と見なされる可能性があります。
結果さえ合っていれば問題ないということでは全くなく、記録の保管も極めてじゅうようです。

弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

大学・研究機関における輸出管理の留意点 ― 学問の自由と安全保障の両立

輸出管理は企業だけの問題ではありません。 大学や研究機関においても、最先端の研究開発や外国人研究者との共同研究の場面では、常に「外為法」が適用される可能性を留意する必要があります。 特に無形の技術提供が輸出とみなされる点は、研究者にとって直感的に理解しにくいことも多く、違反リスクを高めてしまう一つの要因となっています。 本日は、大学・研究機関における輸出管理の特徴と、学問の自由を...

需要者・用途の確認プロセスとその実務的課題

キャッチオール規制の実務では、「誰が」「何の目的で」輸出品を使用するかを確認することが最も重要です。 これを怠ると、外為法違反となるおそれがあります。 本稿では、需要者・用途の確認手順と、その際に直面する現場の課題を整理します。  確認の目的と法的根拠 キャッチオール規制では、輸出者は「用途確認(for what purpose)」と「需要者確認(to whom)」を自らの責任で行わな...

経営層の責任とガバナンス強化~輸出管理はトップの意識が重要です~

輸出管理というと「技術部門や実務担当の仕事」と捉えられがちですが、組織の最終的な責任は経営層にあります。実際に外為法違反が発覚した場合、処分対象となるのは企業・法人としての組織であり、その法的責任は経営者に及ぶという点は改めて留意する必要があるでしょう。 経営者は「知らなかった」では済まされません 外為法では、企業が行う輸出・技術提供について、法人全体の責任が問われる構造になっています。違...

安全保障上のリスク~違反事例に学ぶ~

外為法に基づく安全保障輸出管理は、単なる形式的な手続きではなく、国家の安全と企業の存続に直結する重大な制度です。この対応を怠った場合、仮に違反の意図がなかったとしても、重いペナルティを受ける可能性があります。 今回は、実際の違反事例をもとに、企業や大学が直面しうるリスクと損失の大きさ等をご紹介します。 違反が発覚した際の主な法的リスク 外為法に違反した場合、以下のような法的措置が科される...

なぜ必要?安全保障輸出管理の歴史的背景と国際的潮流

「なぜ輸出管理がこれほど重要視されているのか?」、これは様々な中小企業や大学・研究機関の担当者の方から寄せられる素朴な疑問です。 そこで本日は、日本の安全保障輸出管理制度がなぜ必要であり、また、どのような国際的文脈の中で運用されているのかを、歴史的な背景も踏まえて解説いたします。 1 冷戦時代に端を発する「輸出管理」の国際的起源 第二次世界大戦後、東西冷戦の時代、西側諸国は共産圏への軍事...