「技術」の提供規制:非居住者への情報提供、指示、指導の具体例
輸出安全管理体制の構築リスト規制の対象は「貨物」だけでなく、その設計、製造、使用に必要な「技術」も含まれます。現代の企業活動において、国境を越えたデータのやり取りや、国内にいる外国人従業員への技術指導は日常的です。
しかし、これらの行為が外為法上の「技術の提供」とみなされ、無許可で実施されると、深刻な法令違反となるリスクがあります。
そこで本日は、弁護士の視点から、規制対象となる「技術の提供」が具体的にどのような行為を指すのか、特に注意すべき「みなし輸出」の具体例と、企業が講じるべき実務上の対策を解説します。
目次
技術の提供規制の基本と「役務取引」
外為法(外国為替及び外国貿易法)において、リスト規制に該当する技術を非居住者に提供する行為は、「役務取引」の一種として規制されます。
(1)規制対象となる「技術」
リスト規制の対象となる技術とは、単なる一般知識ではなく、特定のノウハウ、データ、仕様などの形で存在します。
(2)「提供」と見なされる行為
「提供」とは、非居住者がその技術を取得したり、利用できる状態に置いたりする行為全般を指します。典型的な形態は以下の通りです。
①媒体による提供:設計図、仕様書、計算書、製造マニュアル、ソースコードなどを、紙、USB、CD-ROM、メール、クラウドサービスなどあらゆる媒体で提供すること。
②口頭による指導:非居住者に対し、会議、面談、電話、ウェブ会議などで技術的内容を口頭で説明、指導、助言、指示すること。
③技術の閲覧許可: 非居住者に、規制対象の技術情報が格納されたデータベースや設計書へのアクセス権限を与えること。
リスクが高い「みなし輸出」
技術提供規制において、企業が最も注意すべきは、日本国内で行われる非居住者への技術提供、通称「みなし輸出」です。
(1)「みなし輸出」の定義
日本の居住者が、日本国内において、非居住者に対し、規制対象技術を提供する行為は、その技術が最終的に国外へ渡ると「みなされ」、外為法上の許可対象となる場合があります。
(2)具体的なリスク事例
①外国人従業員への業務指示: 自社の研究開発部門や工場で働く外国人従業員(非居住者)に対し、規制対象技術に関する設計の指示や、製造上のノウハウに関する指導を行う場合。
②技術的な研修の実施:海外子会社や取引先の非居住者スタッフを日本に招き、規制対象技術に関する研修を実施する場合。
③データベースの閲覧権限:外国籍の技術者に対し、リスト該当技術のデータが含まれる社内サーバーやクラウドへのアクセスパスワードを付与する場合。
企業が講じるべき実務上の対策
みなし輸出のリスクを管理するためには、以下のような体制構築が重要です。
①対象技術の特定:まず、自社が保有する技術のうち、リスト規制に該当する可能性のある技術を洗い出し、機密レベルを設定します。
②アクセス権限管理:リスト該当技術情報へのアクセスを、「非居住者」である社員に対しては、原則として遮断する仕組みを導入します(ファイアウォール、パスワード管理の徹底)。③居住性の厳格な管理:外国人従業員を採用・配置する際、入社時および在籍中に居住性のステータス(居住者か非居住者か)を正確に把握し、そのステータスに基づいて情報アクセス権限を管理します。
④教育・研修: 経営層、技術部門、人事部門に対し、みなし輸出の概念と、技術提供における具体的な禁止事項に関する定期的な研修を実施します。
弊事務所では、外為法に関する一般的なご相談にとどまらず、輸出管理の体制構築や外部監査等を幅広く取り扱っております。
少しでもご不安な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。