貨物別に見る規制品目の具体例と注意点その3~部品・素材編~
輸出安全管理体制の構築精密部品や工業素材は、航空・宇宙・軍事・電子分野に転用可能な「デュアルユース(民生・軍事両用)」の代表的なものです。
特に中小製造業が多くを担っている高精度部品・金属材料・加工素材等は、外為法上の規制対象に該当することがあり、輸出時には慎重な該非判定が求められます。
規制対象となりやすい部品・素材の例
外為法のリスト規制では、完成品だけでなく、その構成要素である部品や素材も明確に規制対象となります。特に以下のような品目は、該当要注意です。
- ①ジェットエンジン用の高耐熱合金部品
- ②航空機・ミサイル用カーボン材(CFRP等)
- ③超精密な軸受(ボールベアリング等)
- ④ピエゾ素子・圧電セラミックス
- ⑤電磁波吸収材・レーダー透明素材
- ⑥ガスタービン部品・シール材
実際の該非判定においては、技術的な細部まで仕様を確認する必要があります。
実務での該非判定の注意点
(1)加工の有無と精度
同じ素材でも、「どのように加工されたか」、「どの程度の精度で作られているか」によって該非判断は変わります。たとえば、ステンレス素材そのものは非該当でも、航空機向けに特殊加工された場合は該当になることもあり得ます。
(2)素材の構成と用途
混合物や複合材に関しては、含有成分や構成比率、使用目的によってリスト規制に該当するかが決まります。
該非判定の際には、材質証明書(ミルシート)やMSDS、社内設計資料の詳細な確認が必要となります。
中小製造業がとるべき対策
中小企業の場合、輸出管理部のような一つの部署を設けることは現実的ではなく、せいぜいが輸出担当者と担当取締役の数名で判断するということまでできれば御の字というケースも多いといえます。その際に注意すべき点としては、
- ①製品仕様書や設計図にリスト照合済み記載欄を設ける
- ②該非判定結果を納品書・出荷指示書とセットで保管
- ③外注先・協力工場に対しても輸出管理教育を実施し、該非判定基準を共有
- ④用途確認書のテンプレート等を用意し、取引先から情報収集を図る
弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
法務部門の役割と弁護士のサポート ― 輸出管理体制を強化するために
輸出安全管理体制の構築輸出管理は営業部門や技術部門の課題と考えられがちですが、実際には法務部門が中心となり、組織横断的に関与すべきテーマです。 さらに、複雑化する国際環境や頻繁な法改正に対応するためには、外部弁護士のサポートを得ることも極めて有効です。 本日は、法務部門が果たすべき役割と、弁護士による支援のあり方についてご紹介します。 法務部門の役割 ①規制該非判定の支援 技術部門が判断に迷う場合...
国際取引を行う企業や研究機関にとって、「外為法(外国為替及び外国貿易法)」は避けて通れない重要な法律です。輸出、技術提供、海外子会社への情報共有など、日常的な業務の中にも外為法の適用場面は数多く存在します。しかし、その目的や全体像を正確に理解している企業は決して多くないのが実情です。 外為法の目的「国際平和と安全の維持」 外為法第1条は、その目的を「我が国の健全な経済発展を図るとともに、国際平...
「外為法は大企業のための制度」、「大学・研究機関や小規模事業者には関係ない」、このような考えは、非常にリスクの高いものと言わざるを得ません。 実際には、中小企業や大学・研究機関でも外為法の規制対象になる技術・製品を扱う場面が急増しています。 そこで今回は、これらの組織に求められる「輸出管理」についてご説明します。法的責任の所在を明確にし、どこから対応を始めるべきかを見極めることが重要です。 ...
輸出管理違反の制裁と企業のリスク ― 信用失墜がもたらす深刻な影響
輸出安全管理体制の構築外為法違反の嫌疑(被疑)事件の当事者となった場合、「知らなかった」、「故意ではなかった」と主張するだけでは済まされません。 法人に対しては高額な罰金、個人に対しては懲役刑が科される可能性があるほか、行政処分として輸出禁止命令が下されることもあります。さらに深刻なのは、企業の信用失墜によって取引停止や株主からの訴えにつながるリスクです。 本日は、外為法違反に対する制裁の種類と、企業が直面...
行政処分・刑事罰の可能性とその防衛策~企業と経営者を守るためにできること
輸出事後調査対応輸出事後調査において違反が認定されると、企業は行政処分や刑事罰の対象となることがあります。違反が重大である場合、経営者や担当者個人が責任を問われる可能性もあり、企業にとっては重大な危機となり得ます。 そこで本日は、行政処分・刑事罰の種類や適用事例、そして法的防衛策についてご案内します。 行政処分の種類とその影響 外為法に基づく行政処分には以下のような種類があります。 ①指導・注意(...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。