輸出品目のリスト規制該当性を判断するための『該非判定』のステップ
輸出安全管理体制の構築輸出管理を実務的に進めるうえで最も基本となるチェックが、「該非判定」です。
これは、自社で取り扱う貨物や技術が、外為法に基づくリスト規制の対象(該当)となるのか、それとも規制対象外(非該当)なのかを判断するプロセスです。
中小企業や大学・研究機関においても、この判断を適切に行わないと、重大な法令違反や不正輸出につながるリスクがあります。
本稿では、該非判定の考え方と具体的なステップについて解説します。
目次
なぜ「該非判定」を実施するのか?
外為法の輸出管理制度では、リスト規制の適用可否を、「該非判定」によって判断する必要があります。つまり、「該当」と判断されれば輸出許可が必要となり、「非該当」であれば許可不要となります。
該非判定は、輸出の『入り口』における最重要なステップだといっても過言ではありません。
該非判定の3ステップ
ステップ1:貨物・技術の仕様確認
まずは、輸出対象となる製品・部品・技術の正確な仕様や構成要素を把握します。カタログ情報や設計資料、マニュアルなどを活用し、定量的な性能指標や材質、用途などを明らかにします。
ステップ2:法令の規制対象との照合
次に、「輸出貿易管理令別表第1」や「外国為替令別表」といったリスト規制表に記載された品目と照合します。特定のキーワード(例:レーザー出力、精度、周波数など)と一致するかを確認します。
※技術については「技術リスト」の該当項目も確認が必要です。
ステップ3:該当 or 非該当の判断と書面化
照合結果に基づいて、「該当」または「非該当」を判断し、その理由を明記した「該非判定書」を作成・保存します。後日、監査や税関から照会を受けた際に備え、3年間以上の保存が推奨されます。
該非判定を誰が行うべきか?
法的には、輸出を行う「主体者(輸出者)」自身が責任を持って行う必要があります。製造元や商社に依頼して情報を得ることは可能ですが、最終判断は輸出者自身が行わなければなりません。
大学や研究機関の場合、研究者単独の判断ではなく、専門部署(研究支援部門や技術移転オフィスなど)と連携して判定を行う体制の構築が望まれます。
注意:該非判定が「非該当」でも安心はできない
仮にリスト規制に「非該当」であっても、キャッチオール規制の対象になる可能性はあります。特に、輸出先やエンドユーザーにリスクがある場合(例:軍事転用の疑い、制裁対象国など)、用途・需要者の確認(用途確認制度)が求められます。
したがって、該非判定は「リスト照合で終わり」ではなく、取引全体の文脈を踏まえて総合判断する必要があるのです。
弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
経営層の責任とガバナンス強化~輸出管理はトップの意識が重要です~
輸出安全管理体制の構築輸出管理というと「技術部門や実務担当の仕事」と捉えられがちですが、組織の最終的な責任は経営層にあります。実際に外為法違反が発覚した場合、処分対象となるのは企業・法人としての組織であり、その法的責任は経営者に及ぶという点は改めて留意する必要があるでしょう。 経営者は「知らなかった」では済まされません 外為法では、企業が行う輸出・技術提供について、法人全体の責任が問われる構造になっています。違...
再調査・再発防止計画のフォローアップ~改善の継続こそ信頼醸成につながります~
輸出事後調査対応輸出事後調査の対応が一段落しても、企業としての義務が終わるわけではありません。 違反が認定された場合、当局から「再発防止計画」の提出や、その後の実施状況に関するフォローアップが求められることがあります。また、改善が不十分と判断されれば「再調査」が実施されることもあります。本稿では、再調査やフォローアップ対応の重要性と、企業が取るべき実効的措置についてご案内します。 再調査が行われるケースと...
外為法に基づく輸出管理では、「貨物の輸出」、「技術の提供」の行為そのものが規制対象ですが、具体的にどのような場面で許可が必要になるかは、取引の類型によって異なります。また、一定の条件を満たす場合には、「許可不要」となる例外規定も存在します。 本稿では、見落としやすい取引類型と許可要否の判断のポイントを整理し、実務で注意すべき点をご案内します。 「取引の類型」とは何か? 輸出管理の実務では...
キャッチオール規制と企業の実務対応 ― 「疑わしいときは止まる」の原則
輸出安全管理体制の構築外為法による輸出管理の中でも、企業にとって最も実務上の負担が大きいのが「キャッチオール規制」です。 これは、リスト規制品目に該当しない製品であっても、輸出先や最終用途によっては規制対象となる制度です。平たく言えば「品目に載っていなくても危険性が存在するなら止める」という考え方であり、企業は常にエンドユーザーや用途の確認を怠らない体制を構築する必要があります。 本日は、キャッチオール規制の仕...
輸出管理の体制を整備しても、それが現場で正しく運用されていなければ、実効性はゼロです。とりわけ外為法における該非判定やみなし輸出の判断は、第一には現場の担当者が日々の業務の中で適切に対応できるかどうかにかかっています。 今回は、輸出管理における社内教育・研修の重要性と、実務に即した研修プログラムの設計方法をご紹介いたします。 なぜ社内教育が重要なのか? 外為法違反の多くは、「制度を知らな...
東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。