輸出管理とは?~外為法を順守した輸出の重要性~
輸出安全管理体制の構築近年、安全保障上の観点からの輸出管理が企業、大学・研究機関にとって極めて重要な課題となっています。
特に国際的な緊張の高まりや、先端技術の軍事転用リスクへの懸念等が強まる中、日本においても「外為法(外国為替及び外国貿易法)」に基づく規制、安全保障輸出管理の強化、徹底が求められております。
外為法に基づく輸出管理の制度や実務対応については、ルールの理解、ルールの実践等段階を踏んだ対応を行う必要があり、なかなか難しいところですが、基本的な部分から一つ一つ積み重ねていくことが重要です。
輸出管理の目的は「平和」と「安全」の確保にあります
輸出管理は、単に貨物の輸出や技術提供を機械的に管理するだけのものではありません。
その根幹にあるのは、国際社会の平和と安全の維持です。そして、日本では、外為法により、次の2つを柱として輸出規制を設けています。
- ①大量破壊兵器や通常兵器の拡散防止(キャッチオール規制含む)
- ②国連制裁等に基づく安全保障関連措置の履行
外為法が規制する「輸出」とは?
外為法で規制される「輸出」には、大きく次の2つがあります。
- ①文字通りの『貨物』の輸出(物理的に国外へ持ち出す行為)
- ②技術の提供(データやノウハウの国外提供、または「みなし輸出」)
近年特に注意が必要なのが、「みなし輸出」と呼ばれる概念です。
これは、一定のケースでは、国内における技術提供行為も輸出とみなして規制対象にするというもので、大学や研究機関での研究指導、企業の外国人エンジニアとの情報共有などが該当し得ます。
なぜ中小企業、大学・研究機関も対応が必要なのか
かつては、輸出管理は大企業の話だと誤解されがちでした。
様々な先端技術を利用し、貨物を海外に輸出する中心的存在が大企業だったからです。
しかしながら、現在では中小企業であっても先端技術を扱うケースが増加しています。むしろ中小企業が独占しているような先端技術も多数存在します。
また、共同研究や産学連携の活発化に伴い、大学や研究機関でも外為法の対象となる技術が取り扱われる場面が急増しています。
外為法は、万一規制違反をしてしまった場合、刑事罰や行政処分、信用失墜といった深刻なリスクがあるため、組織規模の大小にかかわらず、適切な管理体制の構築が不可欠です。
弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
「なぜ輸出管理がこれほど重要視されているのか?」、これは様々な中小企業や大学・研究機関の担当者の方から寄せられる素朴な疑問です。 そこで本日は、日本の安全保障輸出管理制度がなぜ必要であり、また、どのような国際的文脈の中で運用されているのかを、歴史的な背景も踏まえて解説いたします。 1 冷戦時代に端を発する「輸出管理」の国際的起源 第二次世界大戦後、東西冷戦の時代、西側諸国は共産圏への軍事...
「リストに載っていないから安全だ」と考えてしまうのは、輸出管理で最も多い初歩的な誤解のひとつです。 当然ではありますが、リストに掲載されていない製品や技術であっても、一定の条件を満たす場合には経済産業大臣の許可が必要となります。 これが「キャッチオール規制(catch-all control)」です。 ここでは、その法的仕組みと実務上の対応ポイントを整理します。 キャッチオール規制の目的...
近年、外為法に基づく『輸出事後調査』が中小企業を含む事業者に対して実施されるケースが増加しています。税関(又は経済産業省)によって実施されるこの調査は、外為法等の諸法令に基づく許可を取得していたかどうか、また適切な輸出管理体制が取られていたか等を事後的に確認するものであり、企業にとっては対応を間違えると大きなリスクにつながりますので、注意が必要です。 そもそも輸出事後調査とは? 輸出事後調...
輸出管理違反の制裁と企業のリスク ― 信用失墜がもたらす深刻な影響
輸出安全管理体制の構築外為法違反の嫌疑(被疑)事件の当事者となった場合、「知らなかった」、「故意ではなかった」と主張するだけでは済まされません。 法人に対しては高額な罰金、個人に対しては懲役刑が科される可能性があるほか、行政処分として輸出禁止命令が下されることもあります。さらに深刻なのは、企業の信用失墜によって取引停止や株主からの訴えにつながるリスクです。 本日は、外為法違反に対する制裁の種類と、企業が直面...
国際取引を行う企業や研究機関にとって、「外為法(外国為替及び外国貿易法)」は避けて通れない重要な法律です。輸出、技術提供、海外子会社への情報共有など、日常的な業務の中にも外為法の適用場面は数多く存在します。しかし、その目的や全体像を正確に理解している企業は決して多くないのが実情です。 外為法の目的「国際平和と安全の維持」 外為法第1条は、その目的を「我が国の健全な経済発展を図るとともに、国際平...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。