貨物と技術の「セット」規制:役務取引として規制されるケース |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

貨物と技術の「セット」規制:役務取引として規制されるケース

リスト規制への対応は、「貨物(モノ)の輸出」と「技術の提供」の二つを別個に考えるだけでは不十分です。多くの場合、企業が行う取引は、貨物の販売とそれに付随する技術指導やメンテナンスが一体となっています。外為法では、この「貨物と技術のセット」による取引についても、規制対象となる場合があります。
本日は、弁護士の視点から、貨物の輸出に伴う技術提供がどのように規制されるのか、特に「役務取引」として許可が必要となる具体的なケースと、実務上の該非判定の注意点を解説します。 

「技術の提供」と「貨物の輸出」の連動性

外為法では、貨物の輸出を輸出令、技術の提供(役務取引)を外為令でそれぞれ規制しています。しかし、両者の規制は密接に関連しており、リスト規制貨物の輸出契約を結ぶ際、同時にその貨物の使用や修理に必要な技術を非居住者に提供するケースがこれにあたります。

(1)リスト規制技術の特定

貨物の輸出に伴って提供される技術が規制対象となるのは、典型的には、その技術が外為令別表(輸出令別表第1に相当)の1項から15項に定められた「技術」に該当する場合です。

例えば、高性能な工作機械(リスト規制貨物)を輸出する際、その機械を最大限に活用するために必要な非公開の操作ノウハウ(リスト規制技術)を非居住者である顧客の技術者に教える行為がこれに該当します。

(2)貨物の輸出許可で「技術の提供」がカバーされる範囲

実務上の最も重要なポイントは、貨物の輸出許可を取得すれば、それに付随する技術提供もすべてカバーされるわけではないということです。
提供する技術が、その貨物の「設計」や「製造」に関するノウハウ、または貨物の「使用」に該当する場合には、別途、技術提供(役務取引)の許可が必要となる場合もあります。 

実務上の注意点:契約書と指導内容の峻別

企業が「セット規制」リスクを管理するためには、契約締結時と現場での指導時に以下の点を徹底する必要があります。

(1)契約書での技術範囲の明確化

貨物売買契約や技術指導契約において、提供する技術の範囲を明確に定義し、特に「設計」「製造」に関する情報やノウハウは提供しないことを明記すべきです。

契約書に記載がない場合、現場での曖昧な指導が無許可の技術提供と見なされるリスクがあります。

(2)現場技術者への教育(オーバートークの防止)

リスクが高いのは、輸出先の顧客現場での設置・指導の際に、日本人技術者が親切心や専門知識を過度に示し、指導範囲を超えた「設計」や「製造」に関する機微情報を口頭で伝えてしまうことです(いわゆる「オーバートーク」)。

弊事務所では、外為法に関する一般的なご相談にとどまらず、輸出管理の体制構築や外部監査等を幅広く取り扱っております。
少しでもご不安な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

この記事と関連するコラム


Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75

輸出管理違反の制裁と企業のリスク ― 信用失墜がもたらす深刻な影響

外為法違反の嫌疑(被疑)事件の当事者となった場合、「知らなかった」、「故意ではなかった」と主張するだけでは済まされません。 法人に対しては高額な罰金、個人に対しては懲役刑が科される可能性があるほか、行政処分として輸出禁止命令が下されることもあります。さらに深刻なのは、企業の信用失墜によって取引停止や株主からの訴えにつながるリスクです。 本日は、外為法違反に対する制裁の種類と、企業が直面...

コンプライアンス体制 ― 実効性ある輸出管理の構築

外為法に基づく輸出管理を適切に行うためには、単発の判断や担当者の経験則に頼るのではなく、組織としての内部統制システムを整備することが不可欠です。 経済産業省も「輸出管理内部規程」の整備を推奨しており、企業規模を問わず実効性のある体制を持つことが求められています。 本日は、輸出管理における内部統制の要素と、企業が実務上整備すべき具体的なポイントをご紹介します。 内部統制の目的 まず、...

貨物別に見る規制品目の具体例と注意点その1~ハイテク製品編~

日本が誇る先端技術や高精度機器は、世界中から注目されており様々な分野で高い需要を誇っていますが、それらの中には軍事転用の可能性があるものも多数存在することから、外為法における規制を正確に把握することが重要です。 特に、ハイテク製品や電子機器、半導体関連技術は、リスト規制の対象となる可能性が高い分野ですので注意が必要です。 規制されやすいハイテク製品の代表例 ハイテク分野では、以下のような...

各取引類型における許可対象行為と例外規定

外為法に基づく輸出管理では、「貨物の輸出」、「技術の提供」の行為そのものが規制対象ですが、具体的にどのような場面で許可が必要になるかは、取引の類型によって異なります。また、一定の条件を満たす場合には、「許可不要」となる例外規定も存在します。 本稿では、見落としやすい取引類型と許可要否の判断のポイントを整理し、実務で注意すべき点をご案内します。 「取引の類型」とは何か? 輸出管理の実務では...

再調査・再発防止計画のフォローアップ~改善の継続こそ信頼醸成につながります~

輸出事後調査の対応が一段落しても、企業としての義務が終わるわけではありません。 違反が認定された場合、当局から「再発防止計画」の提出や、その後の実施状況に関するフォローアップが求められることがあります。また、改善が不十分と判断されれば「再調査」が実施されることもあります。本稿では、再調査やフォローアップ対応の重要性と、企業が取るべき実効的措置についてご案内します。 再調査が行われるケースと...