技術データの提供に関する該非判定の特殊性
輸出安全管理体制の構築外為法の輸出管理というと「モノ(製品)」の輸出のみを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、実際には技術情報やデータの提供も規制対象に含まれます。
特に近年では、AI、半導体設計、量子技術などの分野で、技術データの取扱いが企業・大学双方にとって大きなリスクとなっています。
「技術の提供」とは何か
外為法において、「技術の提供」も輸出と同様に規制対象として扱われています。
これは、典型的には、外国に所在する者に対して、リスト規制に該当する技術を提供する行為を指します。
提供手段は多様であり、たとえ物理的に物品を送らなくても、以下のような行為がすべて規制対象となり得ます。
①電子メールでの技術資料送付
②クラウド共有フォルダへのアップロード
③Web会議・オンライン打合せでの技術説明
④USB・ハードディスク等のデータ持出し
⑤外国人社員・留学生への技術指導
つまり、「データが国境を越える」「外国人(非居住者)に知識が伝達される」という状態が生じた時点で、規制対象となり得るのです。
該非判定の特殊性
技術データの該非判定では、情報の精度と公開性の有無が重要な判断基準となります。
例えば、「一般に公知の技術」や「基礎的学術情報」は原則として規制対象外とされています。
より具体的には、
①学会・論文等で既に公開されている情報
②公的機関のデータベースに掲載された情報
③市販書籍・特許公開情報
などは「非該当」とされます。
一方で、以下のような未公開の情報は該当性が高いと判断されます。
①設計図、製造工程、ソースコード、解析アルゴリズム
②装置調整条件、品質管理パラメータ
③特定製品の内部構造・プロセス条件
これらは「公開されていない技術ノウハウ」とみなされ、リスト規制に基づく該非判定が必要と判断される可能性が高いです。
企業・研究機関での典型的リスク
実務では、次のような場面において技術提供が問題となることが多く見られます。
①海外子会社への技術マニュアル送付
②外国人技術者が日本の研究所で勤務し、CADデータにアクセス
③大学で外国人研究者と共同実験を実施
④クラウドサーバーが国外拠点に設置されている場合
特にクラウド利用については、「日本国内からのアクセスであっても、サーバーが海外にある場合」は要注意です。
このようなケースでは、データ管理ポリシーの整備やアクセス制限等も含めた対応が欠かせません。
弁護士としての視点 ― 「見えない輸出」をどう管理するか
弁護士の立場から見ると、技術データの提供は『見えない輸出』であり、企業のガバナンスが最も試される領域です。
見える貨物の輸出管理も難しいですが、それ以上にデータは容易にコピー・転送される等、境界管理が困難です。
そのため、以下のような対応から始めることが有効です。
①社内規程の整備:「技術提供管理規程」を制定し、提供の定義・手続・承認ルートを明記
②契約書の明確化:外国企業・共同研究先との契約に、技術提供・再提供禁止条項を設ける
③アクセス管理:外国人社員・研究者のアクセス制御をシステム的に設定
④教育・啓発:エンジニア・研究者向けの外為法研修を定期的に実施
弊事務所では、外為法に関する一般的なご相談にとどまらず、輸出管理の体制構築や外部監査等を幅広く取り扱っております。
少しでもご不安な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。