安全保障上のリスク~違反事例に学ぶ~ |通関士資格所有の輸出管理・税関事後調査に強い弁護士

安全保障上のリスク~違反事例に学ぶ~

外為法に基づく安全保障輸出管理は、単なる形式的な手続きではなく、国家の安全と企業の存続に直結する重大な制度です。この対応を怠った場合、仮に違反の意図がなかったとしても、重いペナルティを受ける可能性があります。
今回は、実際の違反事例をもとに、企業や大学が直面しうるリスクと損失の大きさ等をご紹介します。

違反が発覚した際の主な法的リスク

外為法に違反した場合、以下のような法的措置が科される可能性があります。

  • ①刑事罰(法人および個人に対する罰金・懲役刑)
  • ②行政処分(輸出禁止・営業停止・許可取消等)
  • ③社会的信用の喪失(取引停止、報道による「炎上」)

特に近年は、「知らなかった」「専門ではない」という言い訳が通用しない状況になっており、経済産業省による立入検査や、厳しい行政処分の事例が増えています。

中小製造業が特定の部品を中国企業に無許可輸出し摘発された事例

ある中小の電子部品メーカーは、特定の金属部品について該非判定を実施せず、許可不要と誤認したまま中国企業に継続的に輸出を行っていました。ところが当該部品は、実はリスト規制対象であることが判明し、過去の出荷分も含めて違反と認定されました。
経済産業省からは一部輸出業務の停止命令が下され、得意先からの契約解除が相次ぎ、最終的に経営破綻に追い込まれました。

外国人研究者への技術提供に関する違反事例

ある大学では、外国籍の研究者に対して、航空宇宙関連の研究データを共有していましたが、当該データが「リスト規制技術」に該当していたことが後から判明しました。外為法上の違反事例に該当する可能性があるとして、文部科学省や経済産業省からの調査を受け、再発防止策の策定と公表を求められました。
報道により社会的にも注目され、当該研究室への企業からの資金提供が打ち切られたという影響も生じました。

違反は、その後の活動そのものに大きな影響があります

輸出管理違反は、以下のように様々な悪影響を生じさせます。

  • ①数百万円~数億円規模の罰金・損害賠償
  • ②信用低下に伴う取引先喪失・入札資格の喪失
  • ③業界内での評価の低下
  • ④経営陣・研究責任者の刑事責任・進退問題

こうしたリスクを未然に防ぐためには、まず自社や所属組織における輸出関連品目・技術の可視化の徹底が不可欠です。その上で、該非判定や取引審査等の判断を行い、記録・証拠として保存していく体制づくりが求められます。

弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

代表弁護士 有森 文昭弁護士 (東京弁護士会所属)

ARIMORI FUMIAKI

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。

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