貨物別に見る規制品目の具体例と注意点その1~ハイテク製品編~
輸出安全管理体制の構築日本が誇る先端技術や高精度機器は、世界中から注目されており様々な分野で高い需要を誇っていますが、それらの中には軍事転用の可能性があるものも多数存在することから、外為法における規制を正確に把握することが重要です。
特に、ハイテク製品や電子機器、半導体関連技術は、リスト規制の対象となる可能性が高い分野ですので注意が必要です。
目次
規制されやすいハイテク製品の代表例
ハイテク分野では、以下のような製品がリスト規制の対象となることがあります。
- ①半導体製造装置
- 微細加工、イオン注入、エッチング装置など
- ②高精度工作機械
- 位置決め精度が高いCNC旋盤・フライス盤等
- ③画像処理用センサー・赤外線カメラ
- 軍事監視・誘導兵器等への転用が懸念されるため要注意
- ④光学機器・レーザー装置
- 出力、波長、周波数等のスペックにより規制
- ⑤通信機器・暗号関連製品
- 暗号機能を有するルーター、モデム、セキュリティソフトウェア等
これらは、細かく技術的要件が記載されており、わずかな仕様、スペックの違いで規制対象になることもあり得ます。
該非判定における注意点
(1)「商社経由だから確認不要」は大間違いです
商社が輸出手続きを担う場合でも、製造業者(メーカー)として貨物を提供する時点での該非判定に関する責任が生じる可能性があります。
特に自社製品であれば、該当・非該当の判断を明確にし、エンドユーザーへの説明責任を果たす体制の整備が必要です。
(2)「仕様書に全部書いてある」では不十分です
リスト規制の判断には、性能値の正確な把握が不可欠です。カタログやスペックシートが曖昧な場合は、設計担当者や開発者と協議し、定量的な技術情報を補足する必要があります。
(3)規制の対象は「完成品」だけではありません
完成品だけでなく、その構成部品などの部分品やソフトウェア、製造用の技術マニュアルなども規制対象になる場合があります。特に、海外の工場や子会社に技術支援を行うケースでは、「技術の提供」として許可が必要になることもあります。
実務担当者が行うべき対応の視点
安全保障輸出管理は、実務担当者レベルではなく経営層が実質的に関与すべきものではありますが、差し当っての対応は担当者が行う必要があります。
その際の視点としては、
- ①製品開発時から各担当と連携し、仕様の確認と項番照合を徹底する。
- ②各社員への教育訓練を通じて法令遵守への意識を広く持たせる。
- ③該非判定に関する資料を自社で作成・保管する。
- ④自社の輸出管理について、定期的に第三者の監査を得て、自社だけで閉鎖的な体制となることを避ける。
弊事務所では、組織における安全保障輸出管理体制の構築サポートや、日常的な該非判定のサポート、外部監査の実施サポート等、幅広くサポートを行っておりますので、ご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください。
この記事と関連するコラム
Warning: Trying to access array offset on false in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
Warning: Attempt to read property "slug" on null in /home/replegal/fefta-fa.com/public_html/wp-content/themes/export-duties/single-column.php on line 75
外為法の輸出管理というと「モノ(製品)」の輸出のみを思い浮かべる方が多いかもしれません。 しかし、実際には技術情報やデータの提供も規制対象に含まれます。 特に近年では、AI、半導体設計、量子技術などの分野で、技術データの取扱いが企業・大学双方にとって大きなリスクとなっています。 「技術の提供」とは何か 外為法において、「技術の提供」も輸出と同様に規制対象として扱われています。 これは、...
外為法に基づき経済産業大臣の許可を得る必要がある場合、「申請にはどんな書類が必要なのか?」、「どれくらいの時間がかかるのか?」、「どこまで詳細に書く必要があるのか?」など、実務上の様々な疑問を抱える大学・企業のご担当者も多いのではないでしょうか。 今回は、みなし輸出の許可申請の全体像と実務的な対応フローについて、ご紹介いたします。 許可申請が必要となる場合 以下のような場合、みなし輸出と...
近年、大学や研究機関に対しても、外為法に基づく安全保障輸出管理の強化が求められています。特に、外国人研究者の受入れや国際共同研究、研究過程におけるクラウド利用が進む中で、『学術研究と法令遵守の両立』は避けて通れない課題でしょう。 本日は、大学・研究機関における輸出管理体制の構築ポイントを、他の一般企業とは異なる実情を踏まえてご紹介いたします。 なぜ大学・研究機関が外為法の規制対象となるのか...
キャッチオール規制の実務では、「誰が」「何の目的で」輸出品を使用するかを確認することが最も重要です。 これを怠ると、外為法違反となるおそれがあります。 本稿では、需要者・用途の確認手順と、その際に直面する現場の課題を整理します。 確認の目的と法的根拠 キャッチオール規制では、輸出者は「用途確認(for what purpose)」と「需要者確認(to whom)」を自らの責任で行わな...
輸出管理違反の制裁と企業のリスク ― 信用失墜がもたらす深刻な影響
輸出安全管理体制の構築外為法違反の嫌疑(被疑)事件の当事者となった場合、「知らなかった」、「故意ではなかった」と主張するだけでは済まされません。 法人に対しては高額な罰金、個人に対しては懲役刑が科される可能性があるほか、行政処分として輸出禁止命令が下されることもあります。さらに深刻なのは、企業の信用失墜によって取引停止や株主からの訴えにつながるリスクです。 本日は、外為法違反に対する制裁の種類と、企業が直面...

東京大学法学部及び東京大学法科大学院卒。弁護士登録後(東京弁護士会所属)、都内法律事務所で執務。都内法律事務所での執務時に、税関対応・輸出入トラブルをはじめとした通関・貿易に関する問題、労働問題等を中心に100件以上の案件に携わる。その中で、通関・貿易に関する問題についてより広く網羅的な知識を取得し、より高品質なリーガルサービスを提供したいと考え、通関・貿易関係の国家資格である通関士の資格を取得。